続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

価値ある勝ち

 前回のエントリから今日まで4試合行われましたが、こんなにも「禍福は糾える縄の如し」「正負の法則」という言葉がしっくり来るターンはそうそうなく、なんだか笑ってしまうような気持ちでいます。
 もう少し掘り下げると、浦和戦は「浦和対策」が全くはまらずに前半チンチンにやられながら、後半のシステム変更と梶山投入で180度試合展開をひっくり返して引き分けに持ち込みますが、続く柏戦はその逆で、前半は柏の事前のゲームプランが全くはまらず、東京は思い通りの試合運びを見せるも、後半ネット・バイアーノの投入と若干のゲームプラン変更で柏が180度試合展開をひっくり返して、引き分けに持ち込まれました。そして、先週の大宮戦では劣悪なピッチに苦しみながらも下で繋いでチャンスを作り続け、いつゴールが決まってもおかしくない展開の中で、助っ人であるノヴァコヴィッチのスーパーなゴール1発に沈んで敗れましたが、一昨日の広島戦では逆に、「広島対策」がはまった面もありながら、それでもチャンスをいくつも作られ、いつゴールを決められてもおかしくない展開を作られながら、しかし後半早々のルーカススーパーゴール1発で沈めて、貴重な勝ち点3を得ました。つまり、浦和戦と柏戦、大宮戦と広島戦の試合展開はそれぞれが全くの「対」になっていて、成績も1勝2分1敗、4得点4失点。その様がまさに冒頭の言葉でズバリ言い表せるのかなと。
 ただ、それぞれの結果がもたらす「意味」という面で言えば、浦和戦の引き分けと柏戦の引き分けが持つ「意味」はあらかた等しかったのに対し、大宮戦の敗戦と広島戦の勝利が持つ「意味」は、圧倒的に広島戦の勝利に価値を見出したい、見出せるのかなと思っていまして(そりゃ、勝った方が負けた方より価値あるやん!という声は甘んじてお受けするとして(苦笑)、負けから学ぶものがあったりもする中で、この負けと勝ちを比較して…という風に受け取っていただければこれ幸い)。先日アップした前半戦を振り返るエントリの中で、こんなこと書きました。

 (例示した)データからは、「ボールを支配しながらゴールを奪うアイデアや精度に欠け、やりきれない攻撃の逆手を取られて数発に沈む」という負けパターンと、「ボール支配率の面ではゲームをコントロールしきれず相手に押し込まれる場面がありながらも、先制点を奪いきって耐えるところは耐える」という勝ちパターン、この2つが−狙いとは異なるものかもしれないが−事実として存在したことを言い表すことができるでしょう。
(中略)
 スタミナ切れや強度不足により、潜在化するハイラインスタイルのリスクが、前後半それぞれの終盤にゴールネットを揺らしてしまうことが数字の事実としてあり、しかしその一方で、耐える時間帯は耐えることができている守備陣の踏ん張りが見て取れるのであれば、「現在失点が増している時間帯に、ある程度しっかり引く形を取って耐え、カウンターの手を見せる」という戦術があってもいいのではないでしょうか?

 大宮戦の敗戦は、言ってしまえば「今季の負け方」そのもの。「まぁ、よくあるパターンだよね…」で済ませるのは良くないのかもしれませんが、内容も結果もまさにそんな感じで、試合後の印象やコメントも目新しいものはありませんでした。そして、広島戦の勝利も言ってしまえば「今季の勝ち方」そのもの。これだけなら「意味は一緒じゃね?」と思われるかもしれませんが、これまでこの勝利パターンは「結果的にそうなった」ものばかりで、「なんとなく東京は守備が…」とか「引いて守ったってろくなことは…」といった評判を生んでしまう一因となっていました。しかし、この日は相手に合わせる意味を、これまでのどの試合よりも多く含んだ布陣を組み、ポポヴィッチ監督が試合後にはっきりと「この試合に関してはどれだけ粘り強く、我慢強く戦えるかということがポイントだった」と口にしたとおり、意図して守って勝ちをもぎ取ろうとした試合でした。しかも、ただ90分引き続けるのではなく、前半のようにオートマチックに5バックになるのではなく、なるべく高い位置を保ち、3バックがしっかり最終ラインとなるような積極的なやり方を見せながら、後半先制点を奪ってからは−各選手、ポポヴィッチ監督からは課題・反省とするコメントが出ていましたが−しっかりとラインを下げ、5−4のブロックで守ることも厭わず、その中でカウンターの脅威を常に出し続けるという勇気を持って引くやり方を見せ、チームとしての幅の広さ、忘れかけていた「本質」の部分を思い起こさせるような戦いをやりきってくれたと思っています。
 広島側の人は、「自分たちで勝ち点を落とした試合」だと言うでしょう。それを間違いだなんて言える展開ではありませんでしたが、それでも私は「東京の執念がシュートを外させた」と思っています。東京がいつもより守備の意識を前面に出し、前線の選手がコースを限定し、ボランチに食いつき、米本が中盤でのボールカット、セカンドボール奪取に奔走し、アーリアが相手ボランチの上がりを懸命に対処し、この日のロッカーで左WBを言い渡された徳永が堂々としたプレーでミキッチを消し、椋原が我慢して3バックと連携して清水を出し抜き、森重が積極的にラインブレイクして2シャドーと退治し、高橋と加賀で佐藤の変幻自在さを薄め続けました。それでも、広島は守備網をかいくぐって決定機を5、6度作りましたが、そのシュートのいずれもが枠を捉えなかったのは、東京の守備の執念が広島の選手からほんのわずか、しかし枠に飛ばすために重要なエネルギー、精度、冷静さ、そういったものを削いだのだと、私は確信しています。もちろん、この戦い方がベーシックなものにはならないでしょう。しかし、どうしても勝利が欲しかったこの試合で、愚直に勝利をもぎ取りにいってもぎ取れたことの価値は決して低くないし、貶されるものでもないと思います。


 そんなわけで、23試合を終えて10勝3分10敗。ここまで「正負の法則」が発動しなくても…と思ったら、得失点差は−2。あかん、まだマイナスや。横浜戦は3−0で勝って、一気にプラスに持っていこう!