続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

立ち返るべき場所、進むべき道

 柏で強烈な危機感を覚えてからほぼ1ヶ月。もろもろの諸事情でその後U−18の試合を見に行くことが出来ていませんでしたが、ようやく今日時間が取れたので、三ツ沢陸上競技場(ニッパツ三ツ沢のとなり)に東京U−18対横浜Fマリノスユースの試合を見に行ってきました。ちなみに、この間3試合は1勝2敗。山梨学院大付属高校、桐光学園高校相手にはいずれも先制しながらひっくり返され2−3、しかし、首位を走っていた市立船橋高校には3−1と見事勝利を収めていたようです。
 まずはスタメンから。

東京U−18



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 ここ3試合CBを務めていた36大西に変えて24柳澤が入り、先日地区トップリーグで見た際に印象に残った27高橋が前節に続いて先発となります。

横浜Fマリノスユース



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 一方横浜は不勉強なのでほとんどの選手が初見ですが、2高野、8喜田あたりは名前を聞いたことがありますかね。


 試合。立ち上がりからの攻撃数回は、東京が二瓶、野沢のところから横に広げる散らしがスムーズで、サイドで受けたボールホルダーに対しても1人が寄り1人が追い越すといった連携が見て取れましたし、二瓶が狭いところでも前を向け、タッチの細かいドリブルは切れ味があり、いきなり相手の脅威となっていたのを見て、「お、だいぶ良くなってきたな〜」なんて暢気に見ていましたが、それが続いたのはものの5、6分。横浜がボランチのところをしっかり監視し始め、DFからのビルドアップに対してもサイドバックへ追い込むような形を取り始めると、途端にパス回しが覚束なくなります。一方の横浜はもっとショートパス主体で来るのかな?と思っていましたが、立ち上がりからやや浅めに取った東京DFラインの裏やサイドのスペースに長いボールを入れてくる攻撃が何度か続きます。それに対して東京はDFラインが警戒のためにややラインを下げましたが、これによりDFラインとボランチの間にスペースができてしまい、そこを田中、伊東が上手く使ってボールを受ける、あるいはそこに守備を寄せておいて空いたサイドを使うといった幅広い攻撃を見せ、15分を過ぎるあたりでは完全に横浜が主導権を握ります。そこから10〜15分ぐらいは何度も東京のペナルティエリアにボールが入り、何度もヒヤッとするシーンが続きますが、何とか最後の局面で守備陣が身体を張ってオープンにシュートを打たせる場面を作らせず、我慢の時間をしのぎ続けます。
 そして、この劣勢の局面を覆すきっかけとなったのが川上と岩田。野沢が試合の流れに埋没気味で、上手くボールに絡んでプレーできていなかったのに対し、川上は広範囲にポジションを動かしてボールを受けてそこから散らす、あるいは向ける時はハーフターンでスッと前を向いて大きな展開を作る、なんてボランチ然としたプレーで何とか起点になろうとする姿勢を見せます。そして、岩田はビルドアップがつまったところで放たれる−中には意図的なものもありましたが−ロングフィードに対して、右に左に走って落下点に入り続けフィフティのボールを幾度もマイボールにし、下りてきてシンプルなポストプレーがあったかと思えば、DFラインの裏や横のスペースを賢く狙い、スッとフリーになって抜け出す動きで相手にプレッシャーを与え続けました。
 この頑張りがモノになったのが34分。何度かロングボールを使っていたこともあったのか、DFラインへのプレッシャーがやや緩くなったところを見逃さず、2、3本低いところでパスを繋いで野沢がフリーでボールを持つと、右サイドでフリーになっていた伊藤にパス。伊藤は高野との1対1で、1度は縦へ運ぶタイミングを読まれて詰まりますが、そこで諦めずもう1回チャレンジしてほんのわずか振り切ってクロスを入れると、ほぼセンターにいた岩田に対して横浜のCBが2枚ともつられます。そして、クロスボールはその動きをあざ笑うかのようにファーへ超えていくと、ここに二瓶が入り込み、左足でダイレクトシュート。これがゴール右サイドネットへ見事に突き刺さり、劣勢だった東京が先制点を奪います!横浜からすれば一瞬の隙というか、完全に崩されたわけではありませんでしたが、抑えるべきところ−東京の攻撃の1人目、野沢、ファーへの二瓶の入り込み−を抑えられなかった悔しい失点なのかなと。逆に、東京にとっては最高の先制点となったんかその後10分間は息を吹き返し、攻めては40分に「セクシー東京」が出るなどパスの回り、選手の距離感、各選手のチャレンジが横浜守備陣を脅かし、守ってもボールホルダーへのプレス、フィフティーのボールへのアタックなどで軽量級の横浜攻撃陣に怖さを与え、ボールの周りを鈍くさせることに成功。ヒヤヒヤものの流れではありましたが、リードして前半を終えます。


 後半も東京優勢の流れが切れません。唯一懸念として残っていたDFとボランチの距離感もハーフタイムでしっかりと修正され、真ん中でゴリッとした起点を作られることが減少。唯一田中には巧みな個人技で外されるシーンも多く見られましたが、そこは人数をかけて決定的な仕事はさせず。また、岩田、高橋を中心とした前からのプレスも積極的で、時間を追うごとに横浜の各選手がボールに関わる、責任を負うことを怖がり、パスが雑になる、簡単なトラップミスを掻っ攫われる、前を向いて勝負できないというシーンがチラホラ出始めます。この良い時間帯のうちに追加点が取れれば…と思っていたら55分、見事に野沢がミドルシュートを決めてくれました!…え?詳細が書いてないって?…だって、見てなかったんだもん(苦笑) だって、横浜ファンの某氏がひょこっと顔を出して、みんなで「あ、こんにちは〜」なんて言ってた瞬間に「バシッ!」というボールを叩く音が聞こえてピッチに目を戻したら、もう決まってたんだもん(苦笑) って私の都合はどうでもいいですね。ともかく、「決めきれずに…」という展開の芽を潰すに値するゴールが決まり、東京側は俄然盛り上がります。横浜はここでガクッと来たのか、さらに消極的なプレーや単純なミスが増え始め、一歩目や判断の部分でも後手を踏む形に。そして、66分に二瓶が放ったそれほど難しい軌道には見えなかったミドルシュートを田口が前にこぼしてしまい、そこをしっかりと狙っていた37長澤(伊藤に代わって途中出場していた)が田口のリカバリーよりわずか先にボールに触り、ゴールへ流し込んで3−0。勝敗の大勢はこれで決しました。
 しかし、横浜も最後の意地を見せ、田口が引き続き怖い存在であり続け、伊東に代わって投入された40大島がDFラインの裏へのチャレンジを積極果敢に引き受け、やや東京の守備が受身の時間帯に入ります。そして、その大島(だったか別の人だったか…ちょっとここは自信がない(苦笑))に上手いタイミングで抜け出され、柳澤が思わず背後から乗りかかるような形でエリア内で倒してしまうと、主審は迷わずPKを宣告します。蹴るのは喜田。対峙するは馬場。放たれた喜田のキックは…ゴール左へと逸れ、枠外へ。事なきを得ました。某氏が「PKはだいたい止める」と紹介したことがある馬場ですが、ここではかなり早めにゴールラインに立ち、手を大きく広げて自分の間合いと相手へのプレッシャーを作っていました。直接止めたわけではありませんが、外させるのもGKの仕事だとすれば、ここは大きな仕事をしてくれたかなと。この後も集中を切らさなかった馬場が20m強の直接FKをビシッと止めるなど横浜の攻撃をシャットアウトしてみせると、攻撃陣では岩田がさすがに疲労を見せながらも最後までゴールに迫り、途中出場の長澤が体躯の強さ、球際の強さを見せてそこをフォローし、とどめはロスタイム、これまた途中出場の斎藤が田口とDFのコミュニケーションミスによるエリア内でのボールのこぼれを逃さずにゴールを決めて4−0にし、タイムアップ。見事に東京が連勝を飾る結果となりました。


 冒頭のリンク先をお読みいただければお分かりの通り、柏戦を見た後には危機感を強く覚えました。それは、今季標榜する「繋いで崩すサッカー」に対しての素地というか、土台を築けていなかったから。さらに、山梨学院大付属高校、桐光学園高校においては昨年までのチームカラーである積極的なプレッシングや切り替えの早さまでもが見られないようなことも伝え聞きました。ただ、市立船橋戦ではその積極的なプレッシングや切り替えの早さを取り戻した、それが攻撃にも上手く作用したという風に聞きました。なので、期待半分不安半分で試合を見始めたのが正直なところ。そして、開始から30分ぐらいは不安の方が的中したというか、何かまた中途半端なところをチーム全員がフラフラしていたような印象を受けました。しかし、岩田の頑張りでチーム全体にスイッチが入り、その前向きな守備が前向きな攻撃に繋がり始まることでチーム全員が自分達を信じられるようになり、そこから東京が主導権を握って離すことはありませんでした。世の中のサッカーのトレンドが変わっても、世代が替わっても、指導者が代わっても、やはりこのスタイル・メンタリティーというのは東京U−18の根幹であり、立ち返る場所としてあり続けるべきであると、試合後は強く感じました。
 とは言え、新しいチャレンジに取り組んでいる中、そこが「逃げ道」であってはいけません。繋いで崩すというトップに倣ったスタイルに挑む以上、究極の理想は「いい攻撃をして攻めきる、失うとしても高い位置で、そして、切り替えを早くして圧力を与える守備をし、そこで奪いきってまた攻撃に入る」ことであり、伝統的な守備・頑張りを活かすために攻撃でもっと圧力をかけるための努力が必要です。柏戦に比べれば、その素地が見られるようにはなりました。チームとしてのスイッチの入りどころが(今日のメンバーでは)「川上が前を向けた時」「二瓶がある程度フリーでボールを持てた時」「岩田がボールを収めた時」と増え、そのいずれか担った際の周りの選手の関わり方がだいぶスムーズになっていましたから。ただ、低い位置からのスタートに関しては不本意の一言。その中心となってしまったのが五勝出。立ち上がり、横浜がロングボールを蹴りこんできたと書きましたが、その1つ目か2つ目のプレー−自分のゴールに向かいながら走り、相手を背負った形でどうボールを処理するか−で、少し迷って相手にあわや奪われるというシーンを作ってしまいました。それ以降、全てのプレーにおいて迷いが生じ、判断が遅れ、危ないプレーが散見されました。
 全てにおいてスピードが増している現代サッカーにおいてはこの「迷い」が一番の大敵であり、チームとして、個人として克服しなければいけない課題だと私は思っていて。大袈裟に言えば、これまでの東京U−18においては、DFの選手が攻撃面で「迷い」を持つことはほとんどなかったのではないか?こなすべき仕事が限定的で、迷う要素がさほどなかったのではないか?と思っています。しかし、今年のやり方においてCBは、長く蹴るのか短く繋ぐのか、縦に入れるのか横でいなすのか、縦ならボランチなのかFWまで飛ばすのか、横ならばつけるべき相手はCBなのかSBなのか、出すべき場所は足下なのかスペースなのか、ボールが自分につけられたときにすぐパスなのか少し運ぶのか、これらを瞬時に判断して、自分でベストだと思うプレーを「迷い無く」やる必要があります。まあ、J1のDFですらこの判断ができない、得意ではない選手はたくさんいるので、これは理想が高すぎると言われるかもしれません。でも、これまで五勝出はいくつもの試合でこういった判断を迷い無くできていました。また、万が一あるプレーがミスになったとしても、そこに「意図」が感じ取れれば、私はネガティブに捉えることはしませんが、この日の五勝出には迷いがあちこちで見て取れ、試合に入り損ねたまま90分を終えてしまうこととなったのがすごく悔しくて。もちろん、他の選手が五勝出の迷いを取り去るような動きをしてあげることも大事です。相変わらず野沢は受けるまでの動きに思いやりが足りないというか、もう1歩、もう1mアングルを作ってあげるだけでだいぶ局面が違うのに…ともどかしさを覚えるようなポジショニングが多かったですし(前を向いたときの仕事っぷりがいいだけに、もったいないのですよ、ホントに)、立ち上がりは長めのボールを蹴るにしても、ターゲットが見えづらいような前線の動きもありましたし。でも、五勝出自身はそれを言い訳にしてはダメ。周りが動いてくれないなら、怒ってでもいいから自身の要求を伝えて、自分発信で迷いを取りにいくことも絶対に必要なわけですから。
 勝って反省できる。それが一番精神的には前向きになれるはず。五勝出ならやれると信じてるから、あえて言わせてもらいました。幸いにも、来週はトップの鳥栖戦とハシゴができそうなスケジューリング(ユースは11時から小平で、トップは15時から味スタで)。1週間後、1つの出来事を糧に五勝出がどう変わってくれるか、チームとして低い位置からのビルドアップに対して改善が見られるか。進むべき道ははっきりしているんだから、そこに向けて迷いを取り去るべく考えて練習に取り組み、試合でそれを発揮してくれることを、前向きな気持ちで待ちたいと思います。