続々々・メガネのつぶやき

主にFC東京、サッカー、当たらない競馬予想の3本立て。思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

Jリーグディビジョン2 第32節 鳥栖0−0東京

 この試合を迎えるにあたって、もちろんお互いに目指すは勝ち点3であったことは疑いようがありませんが、しかし事はそう単純ではなく。東京はこの試合前までの順位で4位徳島との勝ち点差が11。まだ楽観しきれるほどではありませんが、ある程度余裕のある勝ち点差ではあり、アウェイ連戦という点も加味すれば、勝ち点1でもさほどダメージはないと考えられる状況。かたや鳥栖は、後半戦負けなしで得失点差も順調に伸びていて、3位以下のチームとの勝ち点差は詰まっているものの、この混戦から1歩抜き出せそうな状態で迎えた天王山。前日札幌が負けており、(結果的に1万5千人を超えるファンが集まった)ホームでその状況をさらに加速させるためには勝ち点3が欲しいところですが、しかし勝ち点0で終わってしまうとまたややこしくなるわけで。そういう意味では、両監督が立ち上がり、あるいは終盤のゲームプランをどう考えているのかという点にすごく興味を惹かれるゲームだな、と思っていました。


 その立ち上がり、明確な意図が感じられたのは鳥栖の方だったかなと。「序盤から『これは続かないだろう』と思わせるぐらいのプレス」(椋原)をかけ、東京に安易なビルドアップを許しません。それに対して東京はロングボール、あるいは縦への速い楔のパスで前線に起点を作りたかったところですが、ロングボールが今一つ精度を欠き、縦パスも前線から上手くプレスが嵌っていたことでパスコースをことごとく読まれ、CB木谷、呂、ボランチ藤田、岡本の4人が東京の選手の前に出てインターセプトできるシーンばかりが続きました。東京としてはその意図を外すためにも丁寧にサイドを変えながら、中から外へという攻撃に舵を切れればよかったんでしょうけど、なぜか前半は意固地なまでに中での崩しにこだわった印象。ただ、それすらも鳥栖の組織立ったプレスの前にそう「させられた」という印象の方が強く残るぐらい、立ち上がりの鳥栖の守備は完璧だったと思います。
 そこからのカウンターも鳥栖のプラン通り。前線の選手は献身的なプレスを行うものの、そこを外された時にプレスバックはせずに前線に残りカウンターに備えていました。特に豊田がその役割を担い、(テレビ画面外でのプレーなのでこれは推測でしかありませんが)今野、森重との駆け引きに序盤は勝てていて、フリーでボールを受けられたり、上手く裏へ抜け出せたりというシーンが度々見られました。この日は攻撃時のSBのポジションがいつもより高く見え、特に椋原は立ち上がりからかなり積極的にハーフラインを越えて攻撃に参加していたように思いますが、結果的にその積極性が「最高峰が東京のCB2枚vs鳥栖の前線1、2枚」という状況を作ってしまい、高橋もあまり上手いサポートが出来ていなかったことで、カウンターの威力を消せない時間が続いたのかなと。しかし、抜け出されても今野、森重が個人能力でそれをカバーしてしまう、あるいは徳永、椋原、高橋の戻って来る動きは非常に素晴らしく、例えば豊田に収められてもその落としからの展開を安易には許さずに対応できていました。なので、鳥栖が狙い通りの試合運びをしていながらも、じゃあ完全に一方的だったかというとそこまでのイメージではありませんでした。
 そこからは、鳥栖は25分あたりから極端なプレッシングを止めてブロックディフェンスに切り替え、東京が低いポジションではある程度ボールを持てるようになったことも相俟って、試合は膠着状態に。ただ、ダラッとした「両方とも冴えないなぁ…」というものではなく、お互いが常に相手の隙を窺い、それを見せたら一刺ししてしまうよ、という良い意味での緊張感が漂う膠着状態だったかと。それが崩れかけたのが34分。東京が低いポジションではある程度ボールを持てるように…と先ほど書きましたがそれが悪い方に出てしまい、椋原が(若干バウンドが難しかったとも言えますが)ほぼなんでもない横パスの処理を誤ってボールを奪われます。その直後の椋原の対応は悪くなく、谷澤も守備のフォローに入ってきたのを見て「事無きを得たわ…」と思ったその瞬間、谷澤が本来見るべき鳥栖SHキムがフリーで駆け上がってきたのを見て「あ、まずい!ズレる!」とテレビの前で叫んでしまいました。案の定フリーのキムにパスが出て、そこに対して森重がスライドするも今度は池田がフリーになってキムがパス。それに応対するために今野がポジションを捨てて池田にマークに行きますが、徳永の中への絞りも間に合わず、それによって豊田が完全フリーに。池田からのパスを受けた豊田は全くノーマークのままシュートを放ちますが、力が入りすぎたのか枠の上を大きく越えてしまいました。鳥栖からすれば千載一遇のチャンス、東京からすれば絶体絶命のピンチからも得点が生まれず、終わってみればこのシーンがこの試合の結果を最も象徴するものとなりましたね。その時点ではそれを知る由もありませんが。


 後半。鳥栖はさすがに前半からスタミナを消耗するサッカーをしていたので、後半は立ち上がりからブロックディフェンス。それにより、前半の後半以上に東京がボールを持つ時間が長くなり、ハーフタイムに指示があったのか、前半よりは中と外の使い分けが上手くいき、幅広く攻撃を仕掛けることができるようになりました。が、鳥栖の守備は堅く、なかなか最後のところで仕事をさせてもらえません。特に印象的だったのが外側の守備。SBが仕掛ければすぐに1対2、SHとSBが絡んでも2対3、そこにボランチや中からルーカスなどが開いてきても3対4と、ほとんどのシーンで東京が数的優位に立つことができませんでした。前半からその守備は見られていましたが、はっきりと引いて守ると決めて以降の数的優位の作り方は敵ながら天晴れ。それでいて中が薄くなることはなく、クロス対応もほぼ完璧。東京はそれに対してCBまでもが攻撃参加をして、何とか人数をかけて堅いところをこじ開けようとしますが、どうしてもペナルティエリアの中まで入れず、苦しい形でのミドルシュートか細かいつなぎを奪われてしまって「シュート打て!」にしかなりません。
 じゃあ、守って奪った後の鳥栖の攻撃はどうかというと、さすがに後半はそこにエネルギーが残っておらず、ロングボールを入れて何とか収めてくれ、豊田!という形に終始し、その競り合いや突っ掛けの中でセットプレーを奪えれば…という流れ。そのセットプレーで若干ヒヤリとするシーンがあったり、1、2度はカウンターに入りかけるシーンがあったりしましたが、単発に終わってしまいました。最終盤はその傾向がより顕著になり、鳥栖はこれでもかというぐらいラインを深くして守備に人数を裂き、東京はとにかく人数をかけて、手数をかけてあの手この手で崩しにかかりますが、最後までペナルティエリア内でシュートを放つことができず。結局、豊田のあのシュートが外れて以降、後半の選手交代(國吉、新居、野田といった攻撃的選手を使わず1枚残したまま。かつ、2枚目は岡本に代えてDF登録の浦田を投入した)や尹晶煥監督の試合後コメントを見る限り、鳥栖は「引き分けでもいい」というゲームプランを持っていてそれをやり遂げたのかなと。また、東京にとっても攻めきれなかったことについては各自次への課題が残ったとは言え、悪くない勝ち点1だったかなと。そう考えれば「痛み分け」ではなく、お互いにとってプラスの面もあるドローだったと思います。


 個人的には、今季ここまでのベストゲームでした。スカッとした!という試合や、なんて劇的な…という意味でのグッドゲームはいくつもありましたが、上でも書いた通りここまで緊張感にあふれ、得点という期待と失点という不安が本当に絶妙なバランスを保っていたゲームは、おそらく今季初めて。誤解を恐れずに言えば、勝ちを重ねて首位を快調にひた走る中でも何か足りないというか、こういう拮抗した戦いをどこか求めていた自分がいたというか、とにかく「意図のぶつけ合い」がここまで噛み合う試合ってのは、やっぱり見ていてすごく面白い。