続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

Jリーグディビジョン2 第6節 横浜FC0−1東京

 サッカーという競技において「打てども入らない」試合というのは、なぜかどのチームもシーズン中一度は経験するといっても過言ではなく、この日の試合は間違いなくそういう展開でした。私も、相方にはハーフタイム入るところで「今日は23本シュート打って1点入って勝つよ」などと強がりを言ってみせましたが、一方ツイッターでは「個人的には、アウェイ北九州戦のハーフタイムに似た心境。つまりは、イヤな予感」とツイートしていて、まあどうなることやら…と思いながら見ていました。この日の横浜FCイレブンは、およそ1ヶ月前に国立で戦ったあの時とは比べ物にならないほどの「根性」を見せてきました。終わって冷静に振り返れば、実力差は歴然としたものがあったと思います。しかし、岸野イズムの真骨頂とも言える気持ちの部分でその実力差を埋めようと奮闘し、時間を追えば追うほどその差がなくなっていく様は、それだけでは足りないという残酷さも含みながら、見ていてまた1つ勉強になったなぁと。
 今シーズンの東京は、ここまで19の勝利を積み重ねてきました。そのいずれも得られる勝ち点は等しく3であって、どの勝利も欠かせないものではあります。ただ、そうは言いながらもシーズンに何度かは「特別な勝ち点3」という形になる試合はあるもので。この試合も引き分けでもやむなしという試合を強引に勝ちに持ってこれたこと、それが結果的に徳島、札幌、千葉との差を広げ、上位陣の中で唯一勝利した鳥栖の追い上げを振り払うことにつながったこと、何より、東京はここに来て再度ロケットエンジンに燃料を充填して発射しましたよ!というのを内外にアピールするに十分すぎるゲームを見せられたこと、そのいずれをとっても特別な勝ち点3だったのかなと思っています。



 「ゆりかごダンス」をこの世に誕生させたのが、94年アメリカW杯においてロマーリオとともにブラジル代表のダブルエースとして活躍したベベットであることは、サッカーファンの方ならご存知の方も多いはず。大会中だったか大会直前だったかはちょっと忘れてしまいましたが、誕生したばかりのわが子と、懸命に産んでくれた母(選手から見れば妻、か)に対しての感謝と祝福をこめて行われたこのパフォーマンスは以降世界中の様々な選手が模倣し、それぞれの立場で、笑顔で両手を揺らす姿が数多く見られるようになりました。
 ただ、この日のゆりかごはちょっと趣が違いました。これまでのイメージであれば、ゴール後選手だけ(稀にベンチのコーチ陣が混ざることもあります)が数人並んで両手を揺らすというのが定番というか、それしかありえないと。しかし、この日はそのゴールの持つ意味、そして決めた選手の存在価値が相俟ってゆりかごの波がピッチ内のみにとどまらず、ゴール裏、バックスタンド、メインスタンド、それぞれに位置した東京ファンにまで波及し、数え切れない人数がその両腕を揺らしていました。少なくとも私は、一つのゴールでこれほど多くの数のゆりかごが揺れたシーンを今までに見たことがありません。私はテレビの前で、その熱のホンの一角を見るにとどまりましたが、それでもテレビに映るギネス級のゆりかごダンスには、嬉しすぎて泣き笑いさせられました。
 この素晴らしい光景の主役となった石川直宏。スカパー用のインタビューを終え、バックスタンドへ徒歩を進める彼の表情は、どの感情がどう渦巻いているのかなかなか容易に推測することができないほどの「困り顔」に見えました。でも、もちろんそこにマイナスの感情なんか一切なくて、1人の人間のためだけにこれだけ多くの人間がその場の雰囲気を共有し、感謝、興奮、祝福、歓喜、そんなピュアなプラスの感情をぶつけてくれていることにどうリアクションしたらいいのか、そういう困り顔だったように思います。そして、そんな困り顔ならまたいくらでもさせてやりたいよ!などといたずらなことを思ったりしながら、ゴール裏でシャーをして(「う・た・え!」ってコールされていたけど、あれなんやねんw)、メインスタンドのファンに一礼をしてピッチアウトするナオをテレビの前から見届けた直後、こちらも何かとても窮屈な状態から開放されたように一気に力が抜けました。ナオがこれまで歩んできた道のりについて、今更ここで感傷的に書くつもりはありません。過去は過去、現在は現在、見据えるは未来のみ。今が本人にとって100%納得できる状況ではない中、それでも

(あのころを越えられるか?という質問に対し)
「比べることは難しい。ただ、サッカーの面白さや途中出場で出る自分の役割は充実している。自分の目指しているところは、今の結果だけ出なく、最初からプレーすることもそうだし、ずっとプレーを続けること。」

 と語るナオが、それを誰よりも分かっているでしょうから。だからこそ、現在を歩むナオを同時進行で追い続けることができていることがとても幸せだなぁと。これからも、末永くよろしく!


 そんなナオに限らず各個人が、そしてFC東京というチーム全体が様々なことを経験し、勉強させてもらっているJ2というステージ。この1つ前のエントリで皮算用をしましたが、あと何勝とややこしく考えるまでもなく1つずつ勝つことで、そんなJ2と円満に袂を分かつことができる日が近づいてきました。昨季の今頃は「絶対J2なんかイヤだ!」と息巻いて、「J2からやり直せ」なんてぶったことを言う人に強烈に腹を立てていた記憶が残っていますが、結果としてJ2に落ちてしまったことをプラスに働かせることができた点がいくつも見られた、ここまでの戦いに無駄なんてなかったと言えることができることについては(まだしたらいけないんでしょうけど)なんだかすごくホッとしています。
 今後よほどのことがなければ東京が昇格を逃すことはないでしょう。東京が優勝を勝ち取る画もだいぶ明瞭に想像することができる状況となりました。そして、ここからの3節は栃木、東京Vまで昇格候補と見なせば上位直接対決が目白押しで*1、優勝・昇格の行方を大きく左右する1週間となります。東京の相手は鳥栖、大分、東京V鳥栖に再び昇格への試練を与え、大分をいなし、東京Vに引導を渡す−そういう1週間になれば、いいね。

*1:32節に鳥栖−東京、栃木−千葉、7節に鳥栖−千葉、徳島−札幌、33節に東京ダービー、千葉−徳島と各節2試合ずつあります