続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

Jリーグディビジョン2 第25節 栃木1−2東京

 Jリーグは、世界の中でも「ホームとアウェイの差があまりない」と言えるリーグで、そこには様々な要因があります。別にそれがいい悪いという話ではなくね。


 例えば、チケット販売においてアウェイファン向けに優しすぎる点。J1の話をしますが、ホームスタジアムのキャパシティが必ずしも大きくない柏や甲府、磐田が浦和をホームに迎えて試合をする際、国立競技場やエコパスタジアムなどに場所を変更して試合を行うことがあります。これは、浦和側の動因も踏まえた収益面で言えば大いに有効的なことだと思います。しかし、そのことによってスタジアムを埋めるファンの数の比率がどうなるかと言えば、ホームチームの方が少なくなってしまうことが珍しくありません。そうすることで、あくまでファンの声援・ボルテージという面だけで言えば、ホームとアウェイがひっくり返ってしまうことがままあります。それ以外でも、片側のゴール裏全部をアウェイファンが埋め、それに収まらずバックスタンドの一部まで侵攻することもよく見受けられます。
 で、ファン数の多寡がそのまま試合の勝敗を決めてしまうことはありえませんが、しかし、試合の趨勢に少なくない影響を及ぼすとは言えるはず。自分たちの好プレーには拍手をもらい、相手のマイナスのプレーにブーイングなどでプレッシャーを与えることで多少なりともメンタルは揺れ動くでしょうし、審判のジャッジに対しても、ファンが自分たちのチームを優位に吹いてもらえるよう声を出し続けることで(罵詈雑言は絶対ダメだけど)、それが笛の基準をほんのわずかながら動かすことだってあるでしょう。審判も人間ですから。ちなみに、私はそういった外部的要因を浴びたことでホーム寄りの笛になることを、俗に言う「ホームタウンディシジョン」だと思っています。何にもないのに最初からホーム寄りの笛を吹く審判がいたら、そりゃアカンでしょ。まあつまり、ホームの空気をガッチリ作りたいのであれば、若干の収入減はグッと堪えて、アウェイチケット販売数を今以上に制限するべきで、それをせずに今のままやるのであれば、「逆転現象」でのホーム・アウェイ感の相殺による試合趨勢への影響は減らないのかなと。


 例えば、施設(主にフィールド面)が画一すぎる点。一見すると当たり前やん?と思われる方がいるかと思いますが、サッカーのルールの大元である「Laws of the Game」に書かれてあるフィールド幅などの規定を読むと、「タッチラインの長さは90m〜120m、ゴールラインの幅は45m〜90m内とし、タッチラインゴールラインより長くなくてはならない」と書いてあります。要するに、縦横の長さがキッチリ決められているわけではなく、そのスタジアムによって変えることが可能だということ。極端に言えば、タッチライン90m、ゴールライン89mというほぼ正方形の形をしたフィールドでも構わないわけです。これが国際大会になると「タッチラインの長さは100〜110m、ゴールラインの幅は64〜75m」ともう少し厳格なものとなりますが、それでもピッタリ○mと定められているわけではありません。
 で、海外のスタジアムを見ると、まあいろんな種類があります。プロライセンス発行の条件として自前のスタジアムを所有しなければならないイングランドなどでは、その傾向が顕著だと言えます。これによって何がどうなるかと言うと、例えば長さ100m、幅70mというフィールドサイズをホームグラウンドとするチームが、長さ90m、幅60mというフィールドサイズをホームグラウンドにするチームに乗り込んで試合をした際、視野や人の密集感など感覚にズレが生じ、プレーにリズムが生まれずに敗れてしまう、ってなことが起こるうるわけです。また、芝の深さや種類、路盤の凸凹さや管理状況も千差万別で、それにアジャストできずに…というシーンもよく見られます。日本に目線を移しますと、芝についてはかなり各スタジアムで特徴が出てきていて、最近は東京(味スタ)のように、あえてキックオフに近い時間に散水をするところも出てきましたが、ピッチの広さはどこも似たり寄ったりで、生育管理も(酷暑が続く夏以外は)どのスタジアムもある程度良好に行われており、ウォームアップ時間だけでアジャストできてさほど苦労せずに試合に入れることが多いため、そこでアウェイを感じることが少ない点があるのかなと思っています。まあ、サッカー(球技)専用スタジアムが少なく、ほとんどのクラブが陸上競技場を間借りしてやっている限りは、この点は変わらないと思いますけどね。


 例えば、「使い分け」をしない点。近年のJリーグは、結果的に優勝を遂げるチームこそ限定的であるものの、押し並べてチーム力に差がないリーグだと言えます。それにより、思わぬチームが優勝争いやACL争いに絡むことがあれば、まさかという降格や低迷も珍しくなく、見る側にとってはエキサイティングなリーグと言えるでしょう。ただ、プレーする側にとっては「相手がここだからこういうゲームプランで」というものを、ホームであろうがアウェイであろうが変える必要性はあまりないように思うんですよ。海外のように、そのチームごとに明確に優勝争い、欧州カップ戦争い、残留争いというターゲットが定まり、チーム間格差も相俟って、主に中位から下位のチームは割り切って戦い方を変えなければ勝ち点を拾っていけないという状況に迫られれば、Jももっとホーム・アウェイの差が出てくると思うんですが、「ホームだから勝ちにいく」というコメントは多数聞かれても、「アウェイだから勝ち点1をどう奪うか考える」というコメントがほとんど聞かれないこと(聞かれたとしても、試合後のコメントで結果論として聞く程度)が、今のJにそれが必要ない証左なのかなと思うところです。指導者や解説者の中では「ブレない」というキーワードが免罪符のように使われ、それをよしというか、それでよしと考え方が硬直してしまうことがしばしば見受けられますし、ファンの中でも「ホームだろうがアウェイだろうが勝ちにいけ!」とか「引いて守ってカウンターという戦い方を、二元論的に悪と断定しがちな日本人気質」といった考え方をする人の方が多い気がしますしね。


 さて本題。見出しの通り、この日東京は敗れました。これがシーズン4敗目(千葉、草津、北九州、栃木)で、そのいずれもがアウェイです。で、先ほど挙げた3つの要因にそれぞれ照らし合わせてみると、


1.観客動員
 敗れた4試合の観客動員は、千葉16360人、草津6520人、北九州6909人、栃木9953人。この各チームの東京戦を除いたホームゲーム平均観客数は、千葉8918人、草津3165人、北九州3516人、栃木4958人。まあ綺麗に、どの試合も平均のほぼ2倍のファンをスタジアムは飲み込みました。もちろん、アウェイファンにも優しいチケット販売には変わりなく、その増加分に東京ファンがたくさん乗っかっていることは事実ですが、しかし同じようにホームチームのファンも増えているわけで。このうち実際に現地で見た北九州戦で言えば、お客さんの雰囲気、スタジアムの雰囲気はやはり「Beat The TOKYO」で充満していて、ここは北九州のホームなんだぞ!という空気感は身に沁みて感じました。千葉戦ではテレビを通してでも千葉ファンの声が凄かったですし、昨日の栃木戦はバクスタのファンでコレオグラフィーを作るほどでしたしね。

2.スタジアム・プレー環境
 千葉に関しては非常にやりやすい環境下だったと思いますが、草津は枯れ気味の芝と上州颪にゲームプランを壊され、北九州戦は試合開始当初は昼の熱が残る高温と、時間を経るごとになぜか増してった湿度に体力をやられ、栃木戦では酷暑で弱りきった劣悪なピッチにテクニックを奪われ、思うようなゲームをさせてもらえませんでした。今年は特に、ピッチ面以上にその土地の自然にしてやられていることが多いですが、これもアウェイの洗礼のひとつでしょう。

3.使い分け
 今年に限ったことではありませんが、東京はJクラブの中でも屈指の「使い分けをしない(できない)」クラブです(多分)。千葉戦はともかく、草津戦は相手のやり方に対して対応できず、攻めも単調極まりないまま終わりましたし、北九州戦、栃木戦はビルドアップし倒して…という意識に針が触れすぎて、相手が潰しにくるポイントがある程度ハッキリしていたにも関わらず(北九州はサイド、栃木はボランチ)、そこでの繋ぎにこだわって殉じてしまった印象があります。
 栃木戦でさらに細かく言えば、潰しのポイントが自分たちのボランチにあり、梶山が軽いプレーからボールを奪われてピンチを招いたにもかかわらず、その数分後に高橋が同じようなプレーをやらかしてしまい、さすがに2度目は見逃してくれず失点。その後も劣悪なピッチ状況のせいかどうしてもプレー判断が遅れ、パスの精度が1、2mずれ、裏へのロングボールも、前線の4人がそういうボールに鋭く反応できるタイプではないため効果的とまで言えず、結局は自分たちの唯一無二である繋ぎ倒しを「せざるを得ない」状況にさせられてしまいました。また、スタメンとはベクトルが違う石川や鈴木が途中投入されてリズムが変わったと思える展開になればまだ救いがあったんですが、個人的には投入の効果をあまり感じられず、むしろ入れるポジションと交代選手の組み合わせの悪さから中盤が消えてしまい、こちらとしては手を変え品を変えたつもりが、栃木からすれば包装紙が変わっただけぐらいの印象だったんではないかと。0−1や1−2の劣勢からでも勝ちにいくことを否定はしませんが、千葉戦、栃木戦はその気持ちの逆を取られて追加点を許し、草津、北九州戦も追加点を許していておかしくない展開でした。アウェイでは「勝ちにいって負ける」よりは「引き分けを狙って引き分ける」戦い方でいいと思いますし、もっと試合の機微を読めるチームになってほしいなと願うばかりです。


 という具合に、この試合というよりは、今シーズンの東京は「ホームもアウェイもあまり変わらないJリーグ」という自分のイメージをぶっ壊すような戦いになっていると感じています。アウェイが無茶苦茶怖いです。でも、そんな今シーズンがもの凄く楽しいです。ようやく「あぁ、リーグ戦を戦っているなぁ」と心底実感できるシーズンに立ち会えた気がします。この4行を言いたいがために、まあずいぶん長いフリをしてしまいましたが(苦笑)
 圧倒的、人によっては絶対的とまで言い切る戦力を有し、内容もほとんどの試合でポゼッション率やシュート数が相手を上回り、自分たち主導で進めることができる「ガリバー」状態を、東京はリーグ戦で体験してきたことはありませんでした。短いスパンで、という目線なら過去何度かありましたが、シーズン当初からそういう評判・状況の中やってきたことはないかと。その中で、「格上」*1であるが故の苦しさは端々で感じます。それに潰されそうになった時期もありました。しかし、ここにきてまた勝ち負けを繰り返してはいますが確実にチームは成長している、内外の高い要求・プレッシャーをしっかりと受け止めながら、そこから逃げずに日々戦っていると思います。08年広島、09年C大阪、10年柏は、それぞれの手法で相手を圧倒する戦い方を指向し、周りを十分に納得させることができる形にして昇格してみせました。今季の東京は、現在の順位的には大混戦でまだまだ予断を許すはずもない状況ではありますが、道のりとしてはその3チームと何ら変わらないものだと確信しています。この先言いたいことは…推して知るべし。

*1:あまり好きな言葉ではないんですが、便宜上これが便利なので使います。