続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

転機、となるか

Jリーグディビジョン2 第13節 東京1−1湘南
Jリーグディビジョン2 第14節 京都1−4東京
 ともにテレビ観戦だったのでまとめて。あさっての愛媛戦に向けての話もちょいと絡めまして…って上手くまとまればバンザイ(笑)


 草津戦までを振り返るならば、シーズン開始後に平山を失い、米本を失い、草津戦の途中には高松をまでをも失い、シーズン前から取り組んできた「サイドを有効的に使い、縦へ、前へ早く」というスタイルを体現できる状況ではなくなった。まあ、大雑把に言えばそのような感じでしょうか?そこに大熊監督の限界を叫ぶ声や、解任論の走りのような意見が乗っかって(私も揺れていました)、湘南戦を迎える前の雰囲気は決して心地のいいものではありませんでした。
 そんな湘南戦。1トップとして起用できるのがセザー(彼とて1トップは本職ではないはずだけど)しかいなくなったことで、大熊監督はセザーをトップに置き、2列目に鈴木、羽生、田邉を並べ、さらに田邉の守備のタスクや負担を考慮したのか、左SBをここまで前線フル出場の阿部から北斗へ変えるという選択でこの試合に臨んできました。正直、被災地でこのスタメンをメールで確認した時は、文字通り期待と不安が半々で、期待は、羽生が(個人的には最も見てみたかった)セカンドトップ的な役割で起用される点、不安はズバリ田邉でした。あ、誤解して欲しくないのは、「田邉でいいのか(足りるのか)?」という意味ではなく、しばらーく彼のプレーを見ていなかったことによる「田邉、今どうなん?」という意味での不安だということなので、悪しからず。
 ただ、いざ試合が始まると、開始わずか数十秒で、期待はグッと膨らみ、不安は杞憂に終わったな、と思える立ち上がりとなりました。なんせ、田邉が2ついいプレー(セザーへのパス、スローインを受けてからの選択)を続けて、梶山のクロスからセザーが待望のゴール、そして電光石火の先制点を奪えたんですから。あまりに急すぎて「おい、いきなりかよw」と笑いがこぼれてしまいましたが、しかし、嬉しくないはずがない先制点でペースを掴めたのは大きかったなぁと。そこからしばらくは、ベンチに前監督が座っている?というくらい既視感のあるパス&ムーブ&プレスで湘南を攻め立て、いつ2点目を取ってくれるのかというワクワクが溢れていたように思います。
 この時間帯で印象に残っているのが、梶山のポジショニング。城福監督時代のビルドアップは、ボランチがCBの間に入る、あるいはCBの脇に入ってSBと連携しながら組み立てていく形が多く、その役割は、米本がいれば折半できていましたが、不在時はやはり主に梶山が任されていました。そのことで梶山のベースポジションはどうしても低くなり、前へ出るにしても距離が長くなるし、持ち味である「意外性のあるパス」のレンジも長くなってしまうことでミスパスが相対的に増えてしまう、というシーンが多かったように思います(感覚に頼りすぎ、という意見を否定はしませんが(苦笑))。しかし、この試合ではバイタルエリアの監視を徳永に思い切って任せて、自分は高い位置で仕事をするんだ!という意思がはっきりと見て取れました。それにより前線の密度が増し、また、梶山独特の「取られそうで取られない」リズムが狭いエリアでビンビンに発揮され、攻撃に厚みをもたらしていたように思います。田邉、鈴木の両SH(特に田邉)も外に張りっぱなしではなく、機を見て中へ入ってきてセザー、羽生、梶山といい距離感でプレーできていましたし、SHが中へ絞ったスペースには北斗、椋原の両SBがしっかりとオーバーラップしてきて、外からの攻撃も脅威だぞ!とアピールできていました。もちろん裏返しとして、攻め切れなかったり変な奪われ方をしたりした場合のリスクマネジメントをどうするか?という点を見逃してはいけないところですが、奪われた後のファーストプレスをサボらないこと+(これはJ2だから成り立っていると言えなくもないですけど)今野、森重、徳永のトライアングル(個の力)であらかた守れてしまうという2点で、そこを怠ることはなかったかなと。もちろんピンチはありましたけど、トータルとしては攻守両面とも東京が完全に優勢勝ちだった前半でした。
 だからこそ、先に2点を取りたかったんですが…それが叶わず、78分に中村へ見事なヘダーを決められ、結果は1−1のドローに終わりました。何で(東京から見て)左サイドがあんなにがら空きだったの?というのは残念無念ですが、しかしセザーが遅れながらもバックをサボることはなかったですし、坂本(永木?)のスルーパス、臼井の柔らかいクロス、中村のポジション取りと、3つパーフェクトなプレーが続いての失点なので、これは素直にやられたわ〜、でいいでしょう。問題があるとすれば、選手交代から流れを掴み返した湘南に対し、1−0で残り30分からどうゲームを進める(終わらせる)のかという手を持たず、選手交代も何やら曖昧に終わってしまった大熊監督のゲームプランニングかな?と。まあ、何はともあれ、勝っても負けても引き分けても「うーん…」とうなることばかりだった今シーズンにあって、始めて「オーケー!」と思える試合後だったことは間違いなく、当初の理想を一旦しまいこんで、今いる選手で何ができるか?という点をしっかりとホームスタジアムでファンに見せてくれた監督、選手には素直に感謝感謝でした。


 そして、京都戦。オフィシャルの試合記録見出しが「これまでのうっ憤を晴らすように」でしたが、まさにそんな感じの快勝劇でした。
 私はてっきり、悪くなかった湘南戦と同じメンバーでいくと思っていたので、椋原→徳永、空いたボランチに高橋、鈴木→大竹と3箇所も変更してきたことについては驚きました。しかし、椋原より対人が強く、遅れ気味でも絞ってもしっかり守れる徳永をSBに落とすことは、ワッと攻め上がった後のリスクマネジメントを強化するという意味では文句のない人選で(実際、単純にSBのオーバーラップだけで言えば、今季最も少なかった(=守備に比重を置いていた)ように感じた)、前節その徳永が担ったバイタルエリアのカバー役も、現状の私の守備力認識では「高橋>上里」なのでこれも納得。そして、鈴木が怪我だったことは試合中に知ったんですが、しかし、前節で見せたパス&ムーブ思考をより強くするという意味では大竹先発は十分にアリなチョイスで、この辺のフレキシブルさには非常に好感が持てたなぁと。
 で、試合は「ザ・田邉ショー」。もちろん、そこには羽生の素晴らしいポジショニングが下支えとしてあったことは絶対に見逃してはいけませんけど、それでも、田邉らしいちょっと独特なリズムのボールタッチに対して京都守備陣は対応に四苦八苦。特に相手ゴールに背を向けた状態で、DFラインやボランチなどからパスを引き出した際のワンタッチ目のアイデアが素晴らしく、中でもワンタッチでボールを前に転がしての(ハーフ)ターンにはゾクッときました。もともとそういった多様なボールタッチが持ち味の選手ではあると思うんですが、改めてその鋭さとふてぶてしさを目の当たりにして惚れ直しましたよ。その上で、羽生の味方を活かす動きがあったり、セザーは裏にばかりこだわるのではなく、適切な距離感でプレーに関与できていたり、大竹は取り残されることなく躍動し、1ゴール1アシストと結果を残したり、梶山も前節同様積極的なプレーで前線に厚みを持たせることができたり、この5人で京都守備陣をめちゃめちゃにかき回せていました。その前提として、DFラインでのボール回しで京都の前プレをしっかり外せていたことで京都がボールの取りどころを意思統一できず、プレスが徐々に無効化していったことも合わせて書いておきます。とにかく、攻撃面においては城福監督時代の遺産と大熊監督の狙いがガッチリと噛み合った、文句のつけようのないパフォーマンスだったと思います。ヒャッホー!
 守備は…及第点はつけていいと思いますが、先制点を奪った後の10数分はいただけなかったですね。あそこで1−2とされていたら結果はどうだったか分かりませんでしたから。その点で、権田は影のMOMということで。森重は最後の最後で止めるものの、1対1になってからの初速でちぎられそうになるシーンが何度かあって、まあ決して足で稼ぐタイプのDFではないと思いますけど、ちょっと気になりました。今野はルーキーの久保にいい授業をしてあげましたねぇ。特にポストプレーに関しては全く仕事をさせず。終いには久保が、フリーで前を向けたのに今野が視界に入った瞬間に慌ててボールタッチが大きくなり奪われた、ってシーンがあったほど。勢い余って前に取りに行き過ぎて外されるのはご愛嬌にしておきましょう。しかし、ホントにモダンなCBへと変貌を遂げきっちゃいましたね。水曜のペルー戦でも(代表については、チェコ戦が終わってから2試合まとめて雑感を書く予定です)、心からそう思いました。キャラクターや相対的なレベルはまったく違うし、さすがに身贔屓が過ぎるとは思いますけど、ピケ(バルセロナ)、リカルド・カルバーリョレアル・マドリー)、チアゴ・シウバミラン)、ルッシオ(インテル)といった面々と同じ仕事ができていますもん。徳永と北斗は、ある程度守備に比重を置かせれば、これぐらいは当たり前のパフォーマンス。北斗が失点シーンで絞りきれず、先に前に入られたあのシーン以外は問題なかったかと。高橋は、いろんなブログを拝見すると不安が…とか、もうちょっと…という声が聞かれますけど、私は良かったと思っています。もちろん、100%満足できるとまでは言えませんし、徳永と比べるとカバーエリアの狭さだったり、身体能力だったりで劣るとは思いますけど、そこはこのメンバーで4、5試合やるなかで、周りとの意思疎通で解消できる部分もあるはずなので、また次の試合すぐに徳永を…というのは反対です。


 という2試合を受けての愛媛戦。湘南、京都戦と一番違うのは、エルゴラの見出しにもなっているとおり「引いた相手」にこのサッカーがどこまで通用するのか。湘南、京都ともに東京を「五分の相手」とみなしてくれたことで、例えば前からのファーストプレスをいなせれば後ろにはスペースがある、というシーンが何度もありました。しかし、愛媛は相手がどこであろうとベースが「堅守速攻」で、しかも最近は中盤が逆三角形の4−3−3(4−5−1と言ってもいいかも)で、とにかくまずは11人で守備をすることをバルバリッチ監督が徹底していて、簡単には失点しないという評価もあります。
 しかし、私はある程度楽観視しています。それは、開幕当初とは違って、ここ2試合は「センターエリア」をしっかりと使えていること、そして「ドリブル」があるから。開幕当初の鳥栖、千葉、札幌戦あたりは、中で上手くキープしたりタメを作れないことで、相手守備陣の意図どおり外へ追いやられている攻撃が続いていましたが、ここ2試合は梶山や羽生がキープ力を活かして時間を作ってくれて、そこから続けて中を攻めるもよし、外へ開いて攻めるもよし、こちらの意図通りに中外の使い分けができています。また、田邉、梶山、セザー(ベンチスタートが予定される谷澤)は、その種類こそ違えど、ある程度ドリブルで相手を崩す、相手のブロックに入って行くことができるため、引いて組織で(ゾーンで)守る相手にとっては厄介極まりない存在なはず。そこに鈴木や怪我からの復帰があるらしい石川など縦にビュッと行ける選手が、先発なり途中出場なり上手くアクセントになれば相手としては的が絞れなくなり、絶対にブロックに穴が開く場面ができるはず。そうなれば、ブロックを破った後に京都戦ばりの決定力で決めることができるか、焦点はそこだけ。そこはもう神のみぞ知る話なので考えようがなく、そこを除けば以外と普通に崩せるんじゃない?と思っています。
 一方の守備ですが、こちらは代表で今野が不在。そこにはどうやらノースがそのまま収まるとのことですが、森重曰くノースは「あまり出たがらないタイプ」らしく、今までのような今野がある程度前にまで食いついて守備をし、そのカバーを森重が…とはいかない感じ。となると、上手くボランチがCBの前のスペースをケアしながら、1トップが予想される小笠原の下がってのプレーや石井、大山両セントラルハーフのバイタル侵入を、SBが絞ることで杉浦、齋藤両ウイングのインサイドカットを防いでいく必要がありますが、一番気になるのが「大山を主に誰が見るのか?」という点。例えば「センターライン付近で大山が持っている時にボランチが出て行く」という守備をした場合のワーストケースを想定すると、

ボランチが空けたスペースに相手選手が入ってくる→SBがついて行って絞る→空いたスペースにSBがオーバーラップしてフリーでクロス
ボランチが空けたスペースに相手選手が入ってくる→CBが前に出て対応する→その裏を1トップを突かれて抜け出される
ボランチが空けたスペースに相手選手が入ってくる→もう1人のボランチがスライドして対応する→空いたスペースに逆サイドのウイングorもう1人のセントラルハーフが入ってきてフリーで仕事をされる

 と、ざっと3つは思いついてしまいます。特に齋藤のバイタルエリアへのカットインや中央でのプレーはなるべく避けたいシチュエーション。もちろん状況に応じて臨機応変に対応することが大前提ですが、「大山がこのエリアで持った時には誰がチェックに行く」というのをはっきりとさせることが1つ、そして、ノースが出て行きたがらないとするのなら、全体としてプレスは深追いせずにボールを奪うポイントを定め、そこに愛媛の選手をおびき寄せるような守備をして、ポイントにきたら2対1なりサンドなりで奪い取ることが1つ、この2つが重要になるのかな?と見ています。


 ここ2戦のいい流れを堰き止めないためにも、願うは当然完勝劇。驕らず、しかし謙ることなく戦ってほしいと思います。年に1度の駒沢開催、今年は芝生改良工事の結果、例年にはない良コンディションでプレーできそうとのこと。そのピッチの上で東京の選手が引き続き躍動し、駒澤大学までの細く混雑する道を「相変わらずやなぁ」とぼやきながらもルンルン気分で帰りたいぜ!