続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

嘘は悪だが必要

エントリの見出しは、今日発売のFootballista巻頭の木村浩嗣編集長コラム「Footballista主義」におけるコラムタイトルですが、そのコラムがとても面白かったので、紹介も兼ねて少しお付き合いください。なお、以下枠内部分は全てそのコラムからの引用文となっています。


 コラムは、

「正直」や「誠実」が常に正しいとは限らない。

 という書き出しで始まります。その後ある事例を用いて、嘘を「つく側」と「つかれる側」双方の心情を推察し、その項を以下のように締めます。

正直、誠実であることに越したことはない。不道徳や不誠実を奨励しているわけでも、不倫を賞賛しているわけでもない。それらは悪である。が、例外的に、何かを守るための嘘は必要である。自己保身のための嘘は醜いが、他人を傷つけないための嘘は美しくさえある。

 もしかしたら、この木村さんの私見を見た時点でムムッ!?と思われる方がいるかもしれませんが、そんな方は次の書き出しである、

もちろん、こんなことは大人なら誰でも知っていることだろう。(中略)原則だけで生きているうちは、まだ子どもである。

 というセンテンスとともに、このエントリを読むことをお止めになることを推奨します。


 さて、ここからがコラムの本題で、この「正直と嘘」について、サッカー監督がどうであるかについて話が及びます。まず、木村さん自身が少年サッカーの監督を現役でやられていることも踏まえ、

監督は外部(マスコミ)に対しても身内(選手)に対しても嘘をつくのが仕事であるのが、わかる。目的は勝つこと。嘘なんて方便に過ぎない。

 と私見を述べたうえで、去る土曜日に行われたエル・クラシコレアル・マドリーバルセロナ)にちなんで、モウリーニョグァルディオラを引き合いに出し、こう質問を投げています。

モウリーニョグァルディオラ、どっちが正直者で、どっちが嘘つきだと思いますか?

 パッとした印象論で言えば、(これは木村さんも文中で書いているのですが)グァルディオラの方が「誠実」という意見が、まず間違いなく多くなると思います。それは、グァルディオラの会見映像を見たことがある方ならお分かりかと思いますが、柔らかな物腰・口調で記者の質問にしっかりと答え、声を荒げるシーンはほぼ皆無。ましてや気に食わない記者を追い出したり、会見に出席しておきながら質問に一切答えなかったりなんてことは絶対にしない、というのは、まさにそのとおりでしょう。しかし、「誠実である人の言うことが全て本音で正直なのか?」と問われれば、そうであると言い切れないのが世の中の難しいところで。木村さんはある例を挙げて、こう書いています。

モウリーニョはかつて、「私がRマドリーの監督を追い出されても、マラガの監督なんかにはならない。ビッグクラブへ行く」と発言。マラガのファンとフロントの怒りを買ったが、内容にはまったく嘘がない。むしろ、(マラガが)スモールクラブである事実を正直に言い過ぎたから、物議を醸した。一方、グァルディオラからこの手の発言が出てくることは決してない。

 続けて、スペインのあるジャーナリストが語った両者の印象論を用いて、

(そのジャーナリストは)「グァルディオラには自制が見える。もし彼が記者会見で語るほど道徳家だとしたら、彼は完璧な存在になってしまう。」と形容していた。グァルディオラは怒りや憎悪を隠している。安っぽい恋愛本ではやはりダメとされる、“自分の気持ちに正直ではない”男なのだ。
 対してモウリーニョには、「常に本音だ。徹底的に誠実な人間で、ポリティカリーコレクトには興味がないようだ」と言っていた。この表現でもう一つ面白いのは、ポリティカリー「コレクト」であるためには、嘘をつかなければいけない点。コレクトと嘘は、一見正反対だが同居できるのだ。

 と書いています。そして、締めで再び、

もう一度質問しよう。
モウリーニョグァルディオラ、どっちが嘘つきですか?どちらの姿勢が正しいと思いますか?

 と質問を投げていました。
 まあ、この質問に対する答えは人それぞれだと思います。モウリーニョグァルディオラの言葉自体を、そして、その言葉を吐き出す時の表情や口調、シチュエーションなどを勘案して、自分はどう感じるか。その感じ方によってどちらかが、ということになるでしょうし、ともすれば両方とも嘘つき(あるいは正直)だ!という答えも、決して間違いではないでしょう。「駆け引き」がスポーツのエッセンスの1つである以上、こういうところまで楽しむのもまた一興。そういうことを改めて提示したこのコラムは、すごく読み応えがありました。


 翻って、Jリーグの監督って、この辺の使い分けどうなんだろう?と考えを及ばせてみ…ようと思いましたが、私自身そこまで監督コメントに気を配ってきてはなかったので、偉そうに書ける何かは思いつきませんでした(苦笑) もし、自身が応援するクラブの監督(歴代含む)はこうだった!というのがあれば、コメントやらトラバやら、ブクマやらツイートやらで教えてくださいw ただ、自分が応援しているFC東京に関して言えば、やはりコメント・表情で興味を引かせてくれたのは、断トツで城福さんだったなと。そのあたりは…また気が向けば何か書くかもしれません(えー)