続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

グループリーグ各国紹介…みたいなもの グループC

 今日はグループCです。
イングランド(4大会連続13度目)
 シニカルな国民性がそうさせるのか、国内では「結局は…」という悲観論が少なくないと聞くイングランド。しかし、冷静に選手の顔ぶれをみれば、間違いなく優勝候補の1角と言っていいでしょう。とはいえ、そんな豪華なメンバーをどうやって共存させるのか。特にジェラードとランパードはなぜか代表になると活躍度が薄まり、かつ併用して成功したことが少ないという不思議な状況になっていましたが、カペッロ監督はランパードボランチで、ジェラードをサイドハーフで起用することでその解決の糸口を掴み、かつ、戦い方を「左右非対称」にすることで各選手の特性をフルに活かすことに成功しました。
 もう少し説明します。端的に言うと、左サイドは「テクニカル」、右サイドは「アスレティック」と言ったところ。左サイドにはDFアシュリー・コールランパード、ジェラード、ルーニーを寄せ、細かいショートパス中心にテクニカルなサッカーで崩そうとする一方、右サイドにはDFグレン・ジョンソン、MFアーロン・レノンorショーン・ライト=フィリップス、FWエミール・ヘスキーorジャーメイン・デフォーを起用し、縦へのスピードを中心としたアスレティックなサッカーで切り裂こうとする。それぞれ単独のサイド攻撃で崩れる力がある上にそのバランスが非常に巧みで、かつ、単純にへスキーやピーター・クラウチへボールを当てたり、左サイドでボールをコントロールして相手を寄せておいて、ジェラードやランパードの精度あるサイドチェンジでフリーの逆サイドの選手を活かすというダイナミックさも完備していて、攻撃面では私は問題ないと見ています。
 ただ、当然どこもがっちり引いてくるでしょうし、その中で点を奪えない時間帯が続き、チーム全体が必要以上に前がかりになるすぎるのは危険サイン。そもそもラインを高めに設定して中盤をコンパクトにし、イングランドらしい激しいボディチェッキングやフィジカルでボールを奪い取る守備の仕方をするチームですが、それが過ぎると、決してアジリティに優れているとはいえないDFリオ・ファーディナンドジョン・テリーのCBコンビが対応に苦慮しそうな裏のスペースを相手に与えることにもなりますし、G・ジョンソンはそもそもベースポジション取り方がうまくないですし、ランパードとバリーの両ボランチもプレスバックしながら…というタイプではないですし、1試合に2、3度はスーパーヒヤッとするシーンがあるはず。そうなると、一番の潜在的不安であるGKが…というシーンがあるかもしれません。まあ、これは最悪の最悪な展開ですけどね。
 注目選手はMFギャレス・バリー。テクニカルな左サイドとアスレティックな右サイドを繋ぐバランサーとしての存在感は抜群で、このチームに絶対に欠かせない選手。長短のパスの使い分けに間違いが少なく(もちろん精度もあり)、縦への推進力を生ませることができますし、攻めてる際にもバランスを見て前後分断を防ぐ役割もあります。リーグ戦終盤に軽くない怪我を負ってしまい出場が一時は危ぶまれましたが、順調に回復しているとのこと。ランパードやジェラードばかりに目が行きがちですが、是非ともバリーにも注目してみてください。


アメリカ(6大会連続9度目)
 「サッカー後進国」はもはや過去の話。季節ごとに様々なスポーツを経験させることが自然になっているスポーツ大国らしく、競技人口は1200万人とも2400万人とも言われ、国内リーグもすっかり整備され、その中から年々欧州に活躍の舞台を移す選手が増えています(今大会の海外組は19人)。
 そんなポテンシャル十分な選手達が、ボブ・ブラッドリー監督の下で世界屈指のシステマティックさを誇る堅守速攻、献身的なプレーをするんですから、昨年のコンフェデレーションズカップでスペインを破り、ブラジル相手にも健闘を見せることが出来たのは、ある意味では納得できる成績と言えるでしょう。しかし、カウンターもただ単に放り込むんではなく、MFクリント・デンプシーランドン・ドノバンの巧みなオフ・ザ・ボールの動きであったり、そんな動きをしっかりと活かせるMFマイケル・ブラッドリー(監督の息子さんです)の局面をわきまえた長短のパスであったり、「柔らかなんだけど芯のある」カウンター…そう、「アルデンテ」カウンターが見どころです(今思いついたw あってるか分からんしw)。守備も要であるDFオグチ・オニェウが大怪我からカムバックを果たし、長くイングランドで活躍しているDFカルロス・ボカネグラとのCBコンビが形成できるのは嬉しい材料。GKは非常に質の高い3人が揃っていますし(フリーデル選んで欲しかったけどなぁ…)、しっかりと自陣でブロックを作って相手の攻撃を凌げれば、決勝トーナメント進出の可能性は高いと見ていい気がします。
 注目選手はFWジョジー・アルティドール。所属するハル・シティでは28試合で1得点と非常に寂しい結果に終わりましたが、潜在能力はこんなもんではありません。185cm、79kgという体格からは想像できない初速の速さを持っていて、DFラインとヨーイドンをさせればあまり負けることがないぐらいのレベル。逆に、体格を活かしたようなポストプレーであったりエアバトルの方が苦手というよく分からないところはあるんですが、とにかくアメリカの「アルデンテ」カウンターにおいては、絶対に欠かせない選手。他のFW選手が軒並み1桁代前半のキャップ数(3人足しても9キャップ1ゴール)という構成の中にあって、彼の活躍なくしてアメリカの躍進はないと言い切っても過言ではないでしょう。


アルジェリア(6大会ぶり3度目)
 アフリカ予選では同じ北アフリカを代表するエジプトと(血まで流れる)大混戦を演じ、プレーオフを制して久々のワールドカップの出場権を得ました。近年は移民選手(特にフランスから)を多く受け入れ、アフリカのフィジカルとヨーロッパのコレクティブを織り交ぜた均整の取れたチームになってきたことがW杯を掴んだ要因だといわれていますが、しかし、その予選終盤で機能していた3−5−2はあっさり研究され、アフリカネーションズカップではベスト4に進出するもシステムを4−2−3−1へと変更。本番へ向けて試行錯誤が続いています。
 その中で誤算なのが、ここに来ての主軸の離脱。ラツィオで活躍し、トップ下で攻撃を支えていたムラド・メグニが怪我で出場できず、FWの軸であるラフィク・サイフィも故障明けとのこと。それぞれ代役としては、通常左サイドで起用するMFカリム・ジアニ(ヴォルフスブルクで長谷部とともに戦っています)をトップ下に持ってきて、その左サイドにはMFジャメル・アブドゥンが入り、1トップには今シーズンシエナで6ゴールを挙げたFWアブデルカデル・ケザルが任される様子。しかし、ショートパス中心のシステマティックな戦い方を作ってきた中、主力が外れることでその戦い方自体を再考せざるを得なく、3バックに再び戻すのか、あるいはジアニを本来の左サイドハーフで起用し、サイフィを(無理にでも)起用する4−4−2にするのか、直前のテストマッチではそれこそテストがなされてるようですが、ネーションズカップ後の2戦はともに0−3と完敗。組織力で勝ち上がってきたチームに怪我というヒビが入ってしまいましたが、サーダン監督がその修復をできるかどうか、そこが大きなポイントになりそうです。
 注目選手はDFマジド・ブゲラ。前線は前述したとおり再構築が求められる状況ですが、守備陣は盤のプレスに加担はしつつもむやみにラインは上げず、裏を取られることを極端に嫌うリスクヘッジに重きを置いた安定志向でここまできている様子。であれば、1対1で負けないことが失点を防ぐ絶対的要素になってきますが、ブゲラはその点においては全く問題なし。188cm、89kgという恵まれた体格を生かしたぶつかり合い、エアバトルはもちろんのこと、フランスで生まれ育ち、06年からUKに活躍の舞台を移して、戦術的なインテリジェンスさも兼ね備えています。あまりご存じない方がいると思いますが、個人的にはアフリカのCBにおいて5本の指に入れてもいいレベルの選手だと思っていて、攻撃陣に入ったヒビが直せないならば、彼を中心に守備陣がどこまで耐えられるかが勝ち上がるポイントになりそうです。


スロベニア(2大会ぶり2度目)
 プレーオフで大方の予想を覆し、ロシアを破って(スコア的には2−2で、アウェーゴールの差でしたが)本大会の切符を手にしたスロベニア。02年に初出場した時もルーマニアプレーオフで破っての出場で、「ジャイアントキラー」の素地はプンプンです。
 戦い方は、良くも悪くもオーソドックスな4ラインの4−4−2からのプレッシング&カウンター。特に守備面は予選10試合で4失点という鉄壁ぶりで、個々の能力不足を組織的なブロックの作り方とかスライドなどでカバーして、とにかく「穴を開けない」ことを意識してやっているような印象。前線の選手もプレスを怠ることなくしっかりやりますしね、GKも…ってのは後ほど。問題は、もちろん「どうやってゴール奪う?」の1点。東欧らしくセットプレーが1つ大きな得点ゲンでしょうけど、ある程度ブロックを作られた守備に対しての攻め手は少なく、CKを奪えるまでにいけるかも怪しい時間帯は出てくるでしょう。もちろんそこで焦れずにやれる(=身の程をわきまえている)強みというか、強かさはありますが、FWミリヴォイェ・ノバコヴィッチがどれだけ身体を張れるか(深いところでファウルをもらえるか)、あるいは司令塔のMFロベルト・コレンが如何にアクセントをつけられるかがポイントになりそうです。
 注目選手はGKサミル・ハンダノヴィッチ。今シーズンウディネーゼでは37試合出場(1試合だけ欠場)し、失点59は褒められた数字ではありませんが、しかし彼でなければさらに10や15は失点を重ねても…といってもいいくらい、チームに貢献したGKです。192cmという長身を生かしたクロスボールに対しての強さはもちろんのこと、至近距離からのシュートに対する反応の鋭さやミスが極端に少ない選手としてセリエAではすでにトップレベルの評価を受けていて、今大会での活躍次第では、メガクラブからお声が掛かっても(すでにブッフォンの去就が不透明なユベントスが調査以上の興味を示しているとも)不思議ないでしょう。