続々々・メガネのつぶやき

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09−10 その32 インテル−ルビン・カザン

 なんやかんやで大混戦となったグループF。4チーム全てに勝ち抜けの可能性が残されたままの第6節、どちらをリアルタイムで見ようか迷いましたが、第3節のルビン・カザン−インテル戦のイメージが鮮明に残っていたため、こちらをチョイスしました。
インテル 2−0 ルビン・カザン
スコア:31分 S・エトーインテル
      64分 M・バロテッリインテル


 インテルがほぼベストメンバーなのに対し、ルビン・カザンはブハロフ、シバヤ、アンサルディ、シャロノフといった主力を欠き、かなり苦しい戦いが予想された試合前。ベタっと引いて、ドミンゲスやギョクデニズのカウンターで少ないチャンスを…という戦い方も容易に想像できました。しかし、蓋を開けてみればルビンは正面からぶつかりにいく形をとり、開始15分あたりまでは、お互いが高い位置からプレッシャーをかけ続ける展開に。しかし、個人のレベルが圧倒的に高いインテルが強引に流れを引き寄せて、試合の流れが落ち着きかけました。
 しかし、15分にサムエルがハムストリングを痛めて交代するアクシデントが起こると様相は一変。コルドバが控えていたので、別にそれほど慌ててはいなかったと思いますが、ガッと入ったテンションが一段落ついてしまい、しかもこのタイミングでルビンが前から追うのを止めて、2ラインをコンパクトに保ちながら穴を作らない(そして、ベタ引きというほど下がっていない)守備に切り替え、タイトで数的に不利を生まない状況を作り続けたことで、インテルの攻撃は一気に減退しました。この時間、ミリートは完全に封じ込まれていましたしね。逆にルビンは、低い位置でとは言えいい形でボールを奪えるケースが増えて、攻撃のリズムまで生まれる状況に。左からはギョクデニズ、右からはリャザンチェフが両サイドで積極的に仕掛けてクロスを上げるシーン(特にリャザンツェフはサネッティに対してかなりやれていた)や、セマク、ドミンゲスを中心としたパスワークで、インテル守備陣を脅かします。しかし、崩してもシュートを打てるところまで行かず(打てても体勢が厳しい)、得点の匂いは届かなかったのが正直なところでしょうか。
 そんな中迎えた31分。ここまで守備に追われていたサネッティがタイミングのいいオーバーラップを仕掛け、2人をひきながらコーナー深くまでドリブル。そこからエリア内へカットインするところでカットされますが、そのボールが上手く中にこぼれ、そのボールに反応したバロテッリが(結果的にですが)2人をひきつけた上で中へクロス。このボールをエトーが、GKのリジコフが全く反応できないほど豪快に叩き込んで、インテルが先制しました。ルビンからすれば人数は揃っていましたが、2つの局面で2対1を作りながら、どちらも結果として交わされてしまったのが痛かった。
 これで2点が必要になったルビンは、この失点を機に再び前からのプレスを強める形に変えて、アグレッシブにゴールを目指しましたが、立ち上がりでその圧力をすでに受けていたインテルはこれをアッサリといなし、しかも、この時間帯はドリブルが非常に効果的で、サネッティマイコンスナイデルあたりがほぼやりたい放題。ルビンの守備が非常に組織立っていたからこそ、ドリブルでその間隙を縫われてしまうと後手を踏まざるを得ないと言う、やや皮肉な(しかし日本人は大いに見習いたい)展開でしたね。ただ、何とかゴールは割らせず、1−0で前半は終了しました。


 後半。ルビンはセマクを最前線に上げて、ドミンゲスと2トップを組ませる形の4−4−2に変えて攻勢に出ます。インテルは52分にスタンコビッチがこれまた怪我で退いたり(投入されたのがカンビアッソだったので痛手とまでは言えないが)、ルビンのシステム変更にやや対応しきれず、サイド深く押し込まれてセットプレーを与えるという形が2、3度続き、CKから49分にはトリックプレーでギョクデニズが、53、58分にはノボアがそれぞれ決定機を得ますが、枠に飛ばせずフイに。終わって見ればここで点を取れなかったことが致命傷でした。60分を過ぎるとインテルもすっかり落ち着きを取り戻し、64分にバロテッリがGK泣かせの無回転FKをぶち込んで2−0となると、その後はインテルが難なくゲームをコントロール。ルビンも選手交代やドミンゲス、セマクの頑張りで一矢報いようと反撃を試みますが、しっかりと陣形を整えたインテル守備陣の壁は最後まで破れず、このまま試合終了。インテルグループリーグ突破を決めました。


 インテル。正直、先制点をルビンに奪われていたら、分からない試合だったのかなと。ちょっと、両サイドの守備に雑な部分がありましたし、百戦錬磨であるはずの選手たちが、サムエルの怪我による交代を機に、一気にテンションダウンしたのにはビックリしましたよ。この時間帯はモウリーニョ監督のアクションも非常に大きくて、苦しめられたさまがありありでした。しかし、終わって見れば完勝と言っていい内容で、グループステージ突破。2位通過で、スペイン、イングランド勢+もはや勢いだけでは片付けられないボルドーが相手となるため、厳しい戦いが予想されますが、そこまでにどれだけ4−3−3(ミリートエトーバロテッリorクアレスマ)をオプション以上のものに構築できるかが、一つ大きなキーポイントになりそうな気がします。
 ルビン。このグループでなければ…という思いを抱かせるチームでした。改めて軽くバックボーンを紹介すると、ロシア国内のタタルスタン共和国に本拠地を置くチームで、2003年にロシア・プレミアリーグに昇格。昇格当初は波のある成績を重ねてきましたが、昨年に続き今年もロシアリーグを制し、来年のCL出場の切符をすでにゲットして、モスクワ勢やゼニトに方を並べるレベルにまで上がってきました。また、年間1億ユーロ(約130億円)もの資金を投じている現在のメインスポンサー「タトイル社」は「公共の石油会社」、すなわちルビンは「官製クラブ」なんだそうですが、フロント、スポンサーの現場介入はほぼ皆無で、しかし、(常に数珠を手にしてベンチに座る姿が印象的な)ベルディエフ監督に対しては、2シーズン前に成績不振でファンやメディアから上がった解任のプレッシャーをいとも容易くはねのけるなど、手厚くサポートしている様子。ベルディエフ監督はその恩恵を受け、余計なプレッシャーを受けずに自らの哲学(ハードワーク、堅い守備とシンプルな攻撃など)をチームに受け付けることができたことが、今の好成績につながっていると言っていいんでしょう。
 来季の切符はすでにもっています。来季に向けて、また積極的な補強がなされるとは思いますが、今のやり方を崩さずにセンターラインを強化できれば(特にストライカー。ブハロフは国内リーグでは好素材だが、CLレベルだとやや辛い面も)、かなり楽しみなチームの1つだと思いますね。ELでも楽しみです。