続々々・メガネのつぶやき

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09−10 その25 レアル・マドリー−ミラン

 それぞれ意味合いこそ違うものの、「心機一転」して臨む今シーズン。しかし、ここまでの道のりは明暗くっきり、対照的なもの。このゲームも、ここまでの明暗がそのまま反映されたのか否か。10/21のゲームでした。
レアル・マドリー 2−3 ミラン
スコア:19分 ラウール(R・マドリー)
      62分 A・ピルロミラン
      66分 A・パト(ミラン
      76分 R・ドレンテ(R・マドリー)
      88分 A・パト(ミラン


 正直、試合前は「引き分ければ御の字」と思っていましたし、仮に勝つとしても、耐えて忍んでピッポの一撃1−0、みたいな流れを想像していたので、この結果には本当にビックリしました。
 ミランは、直前のリーグ戦、対ローマの後半を(アバーテのアクシデントが原因ではありましたが)前線を左からロナウジーニョインザーギ、パトと並べ、中盤をピルロアンブロジーニセードルフの逆三角形にする4−3−3で戦い、見事に逆転勝利を収めたのは文字情報ではありましたが知っていました。なので、この試合もその形で臨んできたこと自体に驚きはなく、むしろどれぐらいやってくれるのか期待する面すらありました。実際、ロナウジーニョとパトはこのシステムの方が合ってるような印象で、特にロナウジーニョは、窮屈なトップ下からバルサ時代に輝きを放ちまくっていた3トップの左サイドに出されたことで、いいときの面影がだいぶ色濃く感じられるプレーを前半から見せていたように思います。DF−MFの4−3は、アンチェロッティ監督時代からずっとやってきたことなので磐石の構えでしたしね。
 しかし、奮闘するミランをよそにペースを握っていたのはR・マドリーの方。C・ロナウドを怪我で欠いたものの、攻めては非常にボールの走る綺麗な芝の上を精度の高い高速パスが行き交い、中でもシャビ・アロンソの長短のパスはさすがの一言。久々にアロンソのプレーを見ましたが、変わらないどころか、むしろ受け手のレベルが上がったことで、さらにアロンソ自身の凄みも増していたなぁと。もちろん古巣との対戦となったカカも試合に入れば遠慮・容赦なく、チャンスメイクからフィニッシュまで幅広くこなしてミランの脅威となっていました。守っても、最前線でラウールが一切サボることがなくCBやピルロに対してプレッシャーをかけていて、後ろもまずまずの連動性で効果的なプレスをかけられていた印象で、厄介なロナウジーニョに対しても、S・ラモスがほぼマンマークのような形でべったりと張り付き、簡単に前を向かせない守備を徹底できていました。唯一、セードルフに対してのマークがふわふわしていて、そこからピンチを招くシーンはありましたが、(切り替えも含めて)攻守ともに非常にアップテンポなゲームにミランを引きずり込んだR・マドリーがペースを握っていたのは、必然の流れでしょう。
 なので、R・マドリーが先制したことも必然だったかもしれません。しかし、その内容はあまりにも偶発的なものでした。左サイドで崩しにかかり、最終的にはカカからグラネロへパスが出て、グラネロがこれをシュートするもジャストミートできず。ボールは力なくジダの下へ転がっていき、画面がグラネロの悔しがる顔にスイッチングした直後、再び画面は引きの全体図へスイッチしました。そして、何事だ?と思う暇もなく、気がついたらジダの胸元に収まっているべきボールが、ラウールの足元にあるじゃないですか!もちろん、ラウールはやすやすとゴールゲットで1−0。何が起こったかとリプレイを見たならば、ジダがなんとまさかのファンブル。GKが「シュートを一度真下に弾いて勢いを殺した上でキャッチする」ことはよく見られる所作ですが、このシーンでは完全にキャッチする前にボールから目線を切ってしまったことがファンブルの原因だったかなと。このレベルのGKが(そうじゃなくても)やってはいけない大チョンボでした
そんなつまらない凡ミスで先制を許したミランは厳しくなったなぁ…とは誰しもが思ったことでしょう。少なくとも私はそう感じてしまって、ちょっと緊張感が緩んだら一気に眠気が襲ってきて、ここから前半終了あたりまでの展開の記憶はかなりあやふやです(苦笑) そんな曖昧な記憶をたどれば、若干テンポが落ちたことで、ミランにも付け入る隙がでてきたかな?という印象が残っていますが、正しいかどうかは保障しません(苦笑) とりあえずはっきりしているのは、1−0で後半に折り返したということです(笑)


 後半の入りは、前半終了時とほぼ変わらず…なはず。ミランはシュートまでなかなか行けず、逆に個人技でシュートまで行けていたR・マドリーにジワジワ流れが戻り始め、一発の怖さを秘めていたインザーギも60分でボッリエッロと交代し、さらにミランは厳しくなったかな…と思い始めた62分、全く気配のないところで試合が動きました。右サイドから攻撃に入ろうとしたS・ラモス(だったと思います)がボールを奪われ、それを拾ったピルロがドリブルをスタート。それに反応してボッリエッロ、ロナウジーニョ、パトがそれぞれスペースに走り出したものの、対するR・マドリーの守備も人数は揃っていたので、それぞれのポジションでリスクに対応できていたかと。その中で、ピルロがどういう選択肢を選ぶのか見ていましたが、その答えはなんと…30〜35m級のミドルシュートでした。少なくとも私の頭の中にはなかった選択肢で、スローで見る限りピルロはドリブルの最中1度もゴールに視線を送っていなかったはずで、恐らくカシージャスも予測外のシュートだったはず。その結果、カシージャスの反応が完全に遅れ、悪魔のような無回転シュートがゴール左隅に突き刺さって、ミランが同点に追いつきました。しかし、これはホントにすごかった。多分GL全試合が終了して、その全ゴールの中からトップ3を選べと言われたら即座に選ぶぐらいすごかった。ピルロはこれがあるから怖い、怖い。
 そして、動揺を見せたR・マドリーに再び悪夢が襲いかかりました。ピルロのゴールからわずか4分後の66分、中盤でボールを受けたアンブロジーニがルックアップ。そのタイミングを見逃さず、マルセロを置き去りにして裏のスペースに飛び出したパトに対してアンブロジーニが冷静に、そして丁寧にロビングパスを送ると、まだパトが全然エリアの外にいた中でカシージャスが飛び出してきました。しかし、夜露(この前後から雨も降り出してました)で濡れたピッチに落ちたボールはグンと一伸びし、手を使えないカシージャスの横を無情にもすり抜けていき、このボールをパトが落ち着いてゴールに流し込んで2−1。パトのCL初ゴールでミランが逆転しました。結果的に、カシージャスの飛び出しは「チャレンジ」を大幅に飛び越えた「無謀」なものになってしまいました。もろもろの判断含めて全くカシージャスらしさが見られなかった、1点目のスーパーミドルが悪影響を及ぼしたとしか言いようがないプレーで、R・マドリーからすれば残念の一言だったんじゃないでしょうか。一方のパトは、ボールの勢いとカシージャスの圧力を上手く見切っての見事なゴール。これがCL初ゴールだったとは、意外でしたわ。
 火のないところから煙どころか大火事になった4分間で形勢は一気に逆転。R・マドリーが焦りからか疲れからか単純なパスミスが頻発したのに対し、ミランはパスカラットから素早く攻めきる場面と、落ち着いてポゼッションする場面とを巧みに使い分け(この辺はさすがベテラン揃い)、上手く時間を潰していきます。しかし、試合はまたしてもファインゴールによって五分に戻ります。76分に得たCK、キッカーのラウールはエリア内の密集地帯にはキックせず、エリア外でフリーになっていたドレンテにパス。これを上手くトラップしたドレンテが迷うことなく左足を振り抜くと、これが密集地帯の狭い隙間を抜けていき、ジダの懸命のセービングも届かずゴール右隅に突き刺さって2−2となりました。厳しく言えば、ボッリエッロがもう少し寄せきってほしかったところではありましたが、ここも見事なシュートを撃ったドレンテを褒めるべきでしょう。
 その後は激しくなる雨の中お互いが攻め合い、84分には左サイドを破ったカカがシュートを放つもジダがファインセーブ、というシーンがあったり、86分にはロナウジーニョのCKからチアゴ・シウバがものすごい打点の高い強烈ヘッドで勝ち越し…かと思いきやファウルの判定でノーゴール→もみ合うというシーンがあったり(スローで見ると、S・ラモスに押されて前のめったT・シウバの腕が、その前にいたラウールを押したような格好となっていて、ファウルではなかったかと…。ただ、R・マドリーも前半にPKと思しきタックルを流されていたので、トントンか?)とお互いが譲らないまま迎えた88分。右サイドでマルセロのプレッシャーを簡単にいなして反転したパトがドリブルを開始。最終的に左のペナルティエリア角付近にいたセードルフにパスが出て、これを受けたセードルフが追い越していくロナウジーニョのフリーランニングにも助けられてタメを作りながらルックアップし、ファーサイドでフリーになっていたパトをめがけてふわりとしたクロスを送ります。これをパトが冷静にインサイドボレーでゴールに叩き込み、ミランが3−2と逆転しました。このシーンに関して言えば、戦犯はマルセロ。パトに簡単に反転されて前を向かせてしまったこともそうですが、セードルフのクロスに対しても絞りすぎて、パトの姿を完全に見失っていましたからね。試合はこのまま3−2で終了。ミランサンティアゴ・ベルナベウで初勝利を収めました。


 何度でも言いますが、こんなスコアで、こんな展開でミランが勝つとは、全く想像すらできませんでした。4−3−3は現状ファーストオプションになりそうなくらい効果的でしたし、ロナウジーニョネスタピルロといった復活、復調を期待される選手が軒並み仕事をしてくれた、そしてパトがようやく結果を出してくれたことは、大きな収穫だと思います。まあ、ピルロのウルトラミドルがなければ多分負けていたでしょう。でも、結果論ですが、「流れを変えられるビッグプレー」をやってのけるだけの底力がまだミランには残っていたことは嬉しいことですし、不調に喘ぐチームが力が上のチームを下して復調に向かうというのはよくあることで、ローマ、R・マドリーを下しただけでシーズン開始からの借金を返済できたわけではありませんが、光明は十分に見出せる貴重なゲームになったんじゃないかと思います。チューリッヒ戦は、みんな偽者だったの?(苦笑)
 R・マドリー。負けたのは悔しいでしょう。でも、ようやく選手間のコンビネーションは点線になったぐらいで、まだ個で崩すしかない局面が多いかなと。もちろん、今はまだいろいろと試せる時期で、年内はこのような試合が続いたとしても、批判するのはちょっと厳しすぎるかと思います。CLに関して言えば、折り返しのサンシーロでのミラン戦も落とすようなことになると、ちょっと怖いところではありますけど、C・ロナウドイグアインが戻ってくればまた流れも変わるでしょうから、あまり重く受け止めなくてもいい気はしますね。