続々々・メガネのつぶやき

思ったことを、思ったなりに、思っただけ。

ライスシャワーを思っていた自分を思う

 そんなオリンピック中継の最中(ソフトボール終わりぐらいだったと思いますが)、ザッピングしてたらフジテレビ系の「ベストハウス1・2・3」でライスシャワーが取り上げられていました。


 私が競馬と出会ったのは、いまやモンスターソフトとして定着した「ダービースタリオン」だったわけですが、実際のレース映像という意味では95年の天皇賞・春、そう、ライスが2度目の天皇賞制覇を成し遂げたレースが最初でした*1。その天皇賞・春はご存知の方も多いと思いますが、ライスが「4コーナーで早々先頭に立ち、そのまま押し切る」という競馬で勝利したレース。当時のまだ競馬経験値が全くない私にとって、常識的には考えられないあのロングスパートは衝撃的なものでした。そして、そんなレースを440kgそこそこの小さな体で見事にやりきったライスシャワー的場均Jもですけど)に、一瞬にして魅入られました。
今であれば、JRAのHPやyou tubeなどで過去のレース映像がすぐに見られますし、いろんなソースで過去の成績などを一瞬にして探すことが出来ますが、当時はパソコンはおろか携帯すら遠い世界の話だった私は、何とかライスの過去のレース映像・戦績を知りたいという一心で、自転車にまたがって四方八方探し回った記憶があります(当時ウチの田舎では、スポーツ新聞すら手に入れることがままならない感じでしたから)。休みのたびにそうやって出かけるもんだから、親にかなり訝しげに見られた記憶もあります(苦笑)。
そうこうしているうちに何とか「次走は宝塚記念に使う」という情報だけはゲットしました。しかし、NHKで宝塚記念の生放送はなし。仕方ないので、チラッとでいいから流れないかなぁという淡い期待を持って夜のスポーツニュースを待っていました。そして、期待通り夜のスポーツニュースで映像が流れたんですが…結果はご存知の通り、レース中に故障を発生し競争中止。そして、その場で予後不良と診断され安楽死処分となったことが、淡々と映像で、そしてアナウンサーの口から言葉として発せられました。その瞬間、全身の力が抜け、座っていることさえ出来なくなりました。大の字になり、虚ろなまま天井を見上げるしかありませんでした。そして、あまりにショックだったのか、その場では涙が出てきませんでした。翌日、父親にお願いしてスポーツ新聞を買ってきてもらいました。もうこの世にライスはいないんだと覚悟しつつ、何かの嘘であってほしいという気持ちがどこかにありながら、スポーツ新聞の競馬面をめくりました。もちろん、そこに書かれていたのはライスの悲劇を報じる内容でした。その瞬間、(月並みですが)声を上げて泣きました。
 デビュー戦から追いかけていたわけではありません。サイドストーリーに惹かれて好きになったわけでもありません。たった1度だけライスが小さな体を目いっぱい使ってあらん限り走っているその姿を見て好きになった、見方によってはいわば「ミーハー」的な好きだったのかもしれません。けれど、そのたった1度のレースで、ライスは(今思えばステージチャンプの豪快な差し脚やハギノリアルキングの頑張りも含めたあの天皇賞春全てが、という感じですが)私に競馬の素晴らしさ・面白さ・醍醐味を教えてくれたんです。そして、私の人生の中で始めて「夢」を持たせてくれたんです。その夢とは「ジョッキーになること」でした。宝塚記念終了後から幾ばくか経って、本気で競馬学校から資料を取り寄せ、両親に堂々と「俺、ジョッキーになりたい」と伝えたのを今でもはっきりと覚えています。その日から、毎朝欠かさず飲んでいた牛乳を飲まなくなったことも、はっきりと覚えています(笑)。残念ながらその夢は、視力の低下と(牛乳をやめた甲斐なく)身長が伸びたことで諦めざるを得ませんでしたが、あの時の自分は、今考えても一番前向きで、溌剌としていたように思います。
 その後ライスについての書籍やレース映像を収めたビデオがいろいろと発売され、過去の戦績や飯塚調教師以下、関係者がどのようにライスとふれあい、切磋琢磨してきたかに触れることが出来ました。ただ、1つだけ意図的に避けてきたことがありました。それが「宝塚記念のレースを見ること」。あの時から、すでに13年が経ちましたが、いまだにあの宝塚記念をフルサイズで見たことはありません。すでにライスが亡き後の直線の攻防は何度か目にしましたが、ライスが故障を発生してしまうことを知りながらスタートから冷静にレース映像を見ることは、いまだにできていません。今日もレース映像が流れた時間帯は、テレビから目を逸らしていました。ただ、いつの日か、レース映像は必ず見ようと思っています。何かのけじめとか大それたことを言うつもりはありませんが、ライスがこの世を去ることとなってしまった最後の姿をこの目にしっかりと焼き付け、京都競馬場の記念碑に手を合わせることが、ファンとしての最低限の行いなのかなぁと最近ようやく思えるようになってきたので。なかなか状況とタイミングが合わずに京都競馬場へ行くことが出来ないでいるんですが、もしそれが叶う日が来たとき、その出発間際に見ることになるんじゃないかと、自分の中ではおぼろげに思っているところです。タイミングは相方と相談かな(笑)。


 ちなみにですが、ライス以上に好きになった馬は、今のところいません。なんか、気分的には「転校してきた可愛いあの子に一目惚れしたけど、またすぐにその子が転校してしまって、いつまでもその気持ちを引きずっている」という感じなのかもしれませんし(伝わりづらい例えですいません)、どうしても馬券を買う目線で見ると「好き嫌い」がマイナス要素になるケースが多いもので。まあ、でも好きな馬なんて無理やり探すものではないと思うので、また一目惚れできる馬が現れる日を気長に待ちたいと思ってます。

*1:なにせ、ウチの田舎はフジ・テレ東系列がなく、競馬中継といえばNHKがたまにやるビッグレースしかなかったもので