続々々・メガネのつぶやき

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EURO08 準々決勝 ポルトガル−ドイツ

 いよいよ始まる決勝トーナメント。いの一番はポルトガル−ドイツ。グループリーグではくっきりと明暗の分かれた両チーム。「何も変える必要が無い」ポルトガルが勝るのか、「何かを変えなければいけない」ドイツが勝るのか。
ポルトガル 2−3 ドイツ
スコア:22分 B・シュヴァインシュタイガー(ドイツ)
     26分 M・クローゼ(ドイツ)
     40分 ヌーノ・ゴメスポルトガル
     61分 M・バラック(ドイツ)
     87分 H・ポスティガポルトガル


 グループリーグでの不甲斐なさや怪我人の影響もあって「何かを変えなければいけない」ドイツが、予想通りスタメンをいじってきました。私はオーストリア−ドイツ戦の振り返りの中で「中盤をダイヤモンド型にして、バラックをトップ下に配置する形」がいいのではないかと書きましたが、この日ドイツが選択したのは、ボランチロルフェスヒツルスペルガーを置き、その前にシュヴァインシュタイガーバラックポドルスキを並べてクローゼを1トップに据える4−2−3−1。FWのゴメス(不調ということもあるんでしょうが)を削ってでも中盤に厚みを持たせて、攻守両面において中盤でのイニシアチブを握りたい、そしてバラックの攻撃面での能力を最大限生かしたいという意図が感じられる選手起用でしたが、この日は見事にそれが大当たり。ペティート以外の中盤の選手がアタッキングマインド寄りの選手ばかりであるポルトガルに対して、バラックシュバインシュタイガーポドルスキが上手くポジションチェンジを重ねながら攻撃の圧力をかけ続けたことで完全に主導権を握ることが出来ましたし、終始相手のバイタルエリアでボールキープできていたことで、仮に攻撃が失敗してポルトガルボールになっても、後ろの選手が準備する時間を取れて守備面も大きな破綻を起こさなかったような印象を受けました。中でも光っていたのがヒツルスペルガーロルフェスのダブルボランチ。攻撃の4枚(2列目+クローゼ)が守備を疎かに、とまでは言いませんが、かなり攻撃に重心を置いてプレーしていた中で、ともすれば大きく穴が開いてしまいそうな中盤のスペースを上手く潰せていましたし、守備だけではなく機を見て飛び出していくプレーも効果的でした。フリングスの不在は相当な痛手になると思っていましたが、完全に穴を埋め切ったとまでは言わずとも、上々の内容だったんじゃないかと思いますね。
 そしてもう1人、シュヴァインシュタイガーも素晴らしかった。愚行といっていい内容でレッドカードをもらい、それでも再びチャンスをもらったことで相当期するものがあったはずですが、文字通り先発期用に応える、それこそ今季はほとんど見ることができなかったくらいのハイレベルなパフォーマンスをこの大一番で出してくれたんじゃないかと思います。2本のセットプレーのキックや守備面での頑張りも素晴らしかったですが、やはり1点目のフリーランニングは何度見ても美しい限り。ボールサイドの状況を睨みながら一度P・フェレイラの死角に消え、ここぞというタイミングですっとフェレイラの前に入ったところで勝負あり。あとはしっかりとフェレイラをブロックしつつ、サイドで抜け出したポドルスキからのクロスを流し込むだけでした。こういうダイナミックな駆け引きが出来るようになれば、ドイツワールドカップの頃の怖さを相手に与え続けられるはず。一度は失いかけた信頼を取り戻した自信と誇りでさらに目覚めてくれれば、これほど頼もしいものはないですね。トップ下に入ったバラックが皇帝たる存在感を見せ、怪我が心配されたポドルスキも十二分に仕事をしましたし、待望のFW(クローゼ)のゴールもありました。「攻撃は水物」とはどの球技でも言われることですが、フォーメーション変更と気持ちの持ちようでここまで変わるとは、正直想像していませんでした。この選択を下したスタッフ陣に、脱帽です。
 その一方で守備面は、中盤のプレスについてはグループリーグよりはマシだったと思いますがまだ不十分ですし、サイドの守備もスッカスカとまでは言いませんが、相変わらずサイドバックがスペースを空けすぎていたり、複数で追い込むことができていなかったりと依然不安を残すまま。高さという武器がある分、ある程度サイドや中盤から放り込まれても大丈夫という守り方なのかもしれませんが、それでもこの日の2失点目のようにCBのギャップに入り込まれたりはするわけですし、セットプレーでマーキングがずれないとは言い切れません。ただ、ここまで来ていきなり次の試合で組織立った守りが復活!なんてことは考えづらいので、守備に関してはある程度目をつぶって、次もこの4−2−3−1の攻め勝つスタイルで望んで欲しいです。


 ポルトガル。掛け値なしに僅差の試合だったと思います。であるだけに、試合中いくつかあったちょっとしたミス、特に守備面でのミスが勝敗を分けたんではないかと。1失点目は?サイドに人数をかけて奪いにいくも奪えず ?P・フェレイラがシュヴァインシュタイガーとの駆け引きで屈したという2点が重なった失点。相手のパスワーク&個人技を誉めるべきかもしれませんが、少なくともポドルスキのサイド突破の応対にCB(ペペか?)までがついていく必要は無く、あそこはボジングワに任せてすぐに中へ絞っていく動きが必要だったんではないかと思います。P・フェレイラについては、「駆け引きで屈した」以外何も言うことはありません。それよりも残念だったのが2、3失点目。ともにセットプレーでのポジショニング・マークミスによるもので、3失点目は明らかにバラックのファウル(後ろからP・フェレイラを押した)だったとは思いますが、その前段階として、ただでさえ単純な高さで劣るドイツを相手にしてポジショニングやマーキングでミスを犯してしまっては失点になりますよ。特に2点目は何をしたかったのか、誰が誰についているのか曖昧すぎて苦笑いしてしまったぐらい。ここまで目立った守備の破綻が無かっただけに、余計悔やまれる応対だったんじゃないかなぁと思います。
 攻撃面に目を転じても、高さでかなわない分ちょっとしたスペースやDFのギャップ、あるいは裏を狙うことにかなりこだわってやっていましたが、今大会のドイツのサイドにおける守備の仕方やエリア内のポジショニングを考えると、もう少しサイドからシンプルにクロスを上げるだとか、もっと中央ではなくサイドをえぐることに主眼を置いていたらどうなったのかなぁ?という思いは消えません。2得点ともサイドから生まれたものでしたしね。惜しむらくは、J・モウティーニョが最後までプレーできていたらどうだったかという点。代わって入ったR・メイレレスグループリーグの第1節で得点を上げたりもしていますが、どちらかといえば守備で目立つタイプ。グループステージの第1、2節ではデコとモウティーニョのダブル司令塔で中盤のリズムを作り、2人で相手守備陣を中央に集積させておいて、良きところでサイドに散らしてロナウド、シモンらがフリーになる、なんてシーンもあったぐらい相手の脅威になっていましたが、司令塔がデコ1枚になったあとはさすがにバリエーションが限られてしまった(と書きましたが、デコは相当凄かった。それは100%認めるところです。)印象を受けましたし、ウインガー陣がフリーで前を向けるシーンもほとんど作れませんでした。さしものウインガー陣も、ただでさえベッタリと引かれてスペースがない中で毎回複数人を相手にして抜けるわけではなく、どうしても攻撃に流れ・リズムが生まれないまま終わってしまったという感じですかね。


 この試合をもって、ドイツがポルトガルよりいいチームだとは言えないところはあります。ただ、試合全体の流れを見れば、「強いチームが勝つんじゃない、勝ったチームが強いんだ」と誰かが言った言葉がしっくり来る、そんな準々決勝第1試合だったのかなぁと思います。